キラ



「どうして僕達は、こんな所まで来てしまったんだろう……」

キラはつぶやいた。

原形もとどめないほど壊れてしまったフリーダムが、目の前を漂っている。その遠くでは、巨大な爆発も見えた。

――ヤキンの崩壊――

その事実を知る由も無いキラは、ただ呆然と、虚空を見つめていた。

「どうして……」

こぼれる涙。


誰も殺したくなくて。
誰にも死んでほしくなくて。
一分でも、一秒でも早く戦いを終わらせたいと戦って。


なのに彼は、大切な人を……守りたかった人を守りきれなかった。
戦うたびに奪われた、大切な命。
ある時は小さな女の子、ある時はかけがえのない友達、ある時は自分が守らなくちゃいけなかった少女……

結局誰も守れなかった。
たくさんの命と、たくさんの笑顔を。

「なんでっ……」

フレイを奪われたキラは、不殺を捨てた。
……捨てたくなかった。
誰の命も奪いたくなかった。
でも……彼はまた人を殺してしまった。
結局この気持ちには、勝てないのだろうか。


平和のための犠牲。
そのためなら、人を殺して良い、という道理は通用しない。
少なくとも――キラは、嫌だ。



こんな戦いをくり返して、こんな思いをくり返して、戦争が終わった時、自分は本当に笑えるのか?



「……?」

視界の端で何かが光る。
一条の光。それはどんどん近づいてくる。

「……トリィ?」

姿を見つけ、キラは驚きの声を上げた。
――トリィだ。間違いなく。
その奥には、これまた壊れたストライクルージュの姿も見える。

「カガリ……アスラン……?」

無事だった。生きていた。
かけがえのない大切な人たちが、ここに。

それはとても喜ばしいこと。

なのに……なぜかキラは、儚く笑うことしか出来なかった――





-end-
結びに一言
最終回ラストより。運命のキラに続く様に気を配りつつ…



- 18 /69-