ナタル 「そんな、怒ってばっかで楽しいかね〜」 そう言ったのは誰だったか。 「しかめっ面ばっかりしてると、眉間のしわ、取れなくなるぞ?」 自分の眉間を指し示しながら、冗談混じりに言ったのは誰だったか。 「もっと気楽にいこうぜ、中尉」 笑ったのは……誰だったか。 こんな時に、AAで過ごした数ヶ月間の出来事が、走馬灯のように駆け抜けていく。 在りし日の思い出。 戻らない時間。 そして今、彼女の命は消えようとしている。 聞こえるはずが無いと分かりながら、撃てと叫んだ自分。すると、望み通り大天使の砲門から、破滅の光が放たれた。 あの閃光が、自分のいる艦橋を貫けば、ブルーコスモスの盟主も滅び、この馬鹿馬鹿しい戦争は終わりを告げる。 平和な世界が訪れる。 「……それで、良い……」 ――やればできるじゃないか。 我知らず呻くナタルの顔には、笑みがあった。 これまで、自分を相手にしてきたAAの戦いぶりには、ある種の迷いが感じられてきたが、あの光から、そんな葛藤は見えてこない。 覚悟の砲火―― 情にもろいマリュー・ラミアスにとって、この決断は辛いものであっただろう。 ゆえに浮かぶ笑顔。 苦渋の決断を下した彼女に向けられた、最高の微笑は……妹の成長を喜ぶ姉のような、柔らかな微笑だった。 -end- 結びに一言 ナタル最期の微笑を自分なりに解釈。 - 17 /69- |