イザーク



壁に背を預け、イザークは外を眺めていた。
瞳に生気は無い。
士官学校を卒業して配属されたのはクルーゼ隊。しかし同じ赤服隊員は、ラスティとニコルが死亡。ディアッカとアスランは……ザフトを離反した。

「…………」

言葉無く、宇宙を眺める。
生死不明だったアスランとディアッカだが、アスランは生存がすぐに確認された。しかもフェイスになって……自分よりも早く出世してしまった。彼を追い抜くこと、それがイザークの目標にもなっていた。
なのに……離反して。

「……くそっ」

ディアッカも生きていた。彼もまた――連絡の一つもよこさず離反組。
虫唾が走る。

なぜザフトを裏切る? なぜ自分の国に引き金を向けるのか、イザークには理解できなかった。
いや――しようとしないだけ。
してはいけないと、どこかで警鐘を鳴らす自分がいる。


プラントを裏切った気は無い。


ディアッカはそう、断言していた。
なら彼は、何と戦っている――?

ナチュラルは、敵。
敵は、討たねばならない。
この原理でいけば……ナチュラルは全て滅ぼさなくてはならない。

ならば自分は、ナチュラルを全滅させるために戦っている――?

混乱する。
彼が……イザークが戦う理由は、そんなんじゃない。プラントを守るためである。
だから、プラントの平和を脅かす“敵”と戦っているのだ。

そしてまた、最初の問題に戻る。

戦うべき敵。
ナチュラルを全て滅ぼさなくては戦争が終わらなくて、軍がナチュラルを全滅させると言えば、軍人のイザークは、その命令に従わなくてはならない。


「……一体、何が正しいんだ……」

筋の通った友の言葉に、イザークは迷いを覚えていた。

今、自分がしていること。
今、自分が戦っているもの。
今、自分が判別している敵……


本当に戦うべきもの――その答えを見つけた時、彼はもっと、強くなる――





-end-
結びに一言
ディアッカさんとの会合直後、迷い始める隊長を。



- 14 /69-