カガリ



彼女は呆然と、宇宙を眺めていた。
L4コロニー郡へ向かう事が決まり、ほんの少しだけ落ち着いて……考える余裕が、カガリに生まれ始めていた。

オーブが焼かれた。
父は……炎に包まれたオーブに残った。
かけがえのないものを沢山失った彼女は、漠然と、自分が置かれている境遇を考える。


自分は――生かされているという現実。


「私は……」

――守られるほどの価値があるのだろうか。
つい、思ってしまった。


元首の娘にして、猛りの希望を紡ぐ存在。
在るべきビジョンは見えている。
しかし……自分にそこまでの器量があるのだろうか。
父の様に、国を率いていけるのか――


「悩むなんて、らしくないですよ」
「!!」

突然声をかけられ、カガリは身を強張らせて振り向いた。
そこにはなぜか、

「……ミリアリア?」

AAにいるはずの少女が立っている。

「お前、どうして……」
「ちょっと用があって……それより、どうしたんですか? 暗い顔は似合いませんよ??」

言うミリアリアは、儚げに笑った。
カガリは俯き、首を振る。

「何でもない」
「……そう、ですか……」

知られてはならない悩み……いや、迷いだ。
背負うものが大きすぎて、威圧に押しつぶされそうだなんて……こんな自分について来てくれる少女に、話せる事ではない。

「でも、そんな顔してると、みんな心配しますよ?」

彼女はもっともな事を言った。
そして笑う。

「みんな、あなたの笑顔が大好きなんですから」
「……私の……笑顔……?」
「あなたが笑うだけで、みんな元気になるんです」
「そう……か?」

カガリは苦しみ様、笑顔を作り出した。

「はい」

ミリアリアも、先ほど以上の笑顔になる。

「みんな、あなたの力になりたいんです。
……一人で、背負い込まないで」
「……なんだよ、隠した意味、ないじゃないか……」

零れる苦笑い。
ミリアリアはカガリの横に立ち、言葉無く彼女の頭をなでた。

その無言の空間が……カガリに不思議な安心感を与えた。





-end-
結びに一言
多分これが本家オレンジ(苦笑)



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