フラガ&クルーゼ



互いを感じる存在――
それでいて二人は、対極の存在である。



「おー、みんなが寝静まってる中、坊主は一人寂しく機体整備か?」

ちゃかす様に言うは、ムウ・ラ・フラガ。彼が話しかけるのは、晴れて仲間入りしたばかりのディアッカだ。

「おっさんこそ、こんな夜中に格納庫って、どんな用事さ」
「あのなー……俺まだ三十路前だぜ? おっさんは無いだろ、おっさんは」
「こっちも一応十七歳の青少年なの。坊主は止めてほしいねえ」

二人の間に、火花が散る。しかしそれは……一瞬のことだった。
笑みがこぼれる。

「オーブで派手にやられたからな。念入りに整備しとかねーと」
「じゃ、手伝ってやるよ。二人でやった方が早いだろ?」

こうしてムウは、バスターの整備を手伝い始めた。
ディアッカと意思疎通を図ろうとしているのだ。互いを知ること、それが信頼関係を築く第一歩である。特にディアッカは、この間まで捕虜だったこともあって、艦内に頼れる人間はまだいない。
だからこそ、一人でいるディアッカに声をかけた。それはどれだけ、彼の心を安心させたか。

ムウはどんな状況にあっても、仲間に勇気を与え続ける。

絶望を吹き飛ばす笑顔で。



一方、ラウ・ル・クルーゼは、

「君に危害を加えるつもりは無い……それくらい、とうに分かっているだろう?」
「う……」

仮面の下から、穏やかな笑みを浮かべて見せた。
母艦の中、警戒心をむき出しにするフレイに対して。
彼女にかける優しい声には、意味がある。なんせクルーゼの声は、亡くなったフレイの父親と同じもの。
ゆえに彼の声は、フレイを惑わせる。
亡き父の声は、彼女に懐かしさと安らぎを与えていた。

脳が震える。

「座ってくれたまえ。美味しい紅茶でも淹れようか」

クルーゼは微笑む。フレイをこちら側に取り入れるために。
こうして彼は、自分の思い描く未来を作るための駒を増やす。

全ては――恐ろしい計画のために。


同じ存在。同じ笑顔。
それでも二人の笑顔の質は、相反する場所にある――





-end-
結びに一言
正確に言うと、同じ遺伝子を持つ存在……? 遺伝子学的には親子の立場にある二人、で良いのでしょうか??



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