心配なのは…



暇で暇でしょうがないが……一緒にいたい相手ではない。
早く一人になりたい捕虜は、軽く嫌味を放ったものの、キラはそれをするりと避け、

「……心配で……」
「は?!」

予期せぬ言葉に、捕虜は目を見開いた。
ぽかんと口も開く。
……なぜ、彼に心配されなくてはならないのか分からない。同胞だから?? 色々考えを巡らせている内に、キラは決定的な一言を解き放った。

「君は……アスランの、友達……だと思って……」
「――っと待て、アスラン?! 何でお前、アスランの名を――」

衝撃に震える捕虜に、キラは伝える。

「友達……だった、から……」

あえてキラは過去形にした。
ストライクは――キラは、幾人もの彼の『仲間』を殺してきた。キラも大切な人を奪われてきたが、それでも彼は、まだアスランを『友達』だと思っている。
しかしキラの中に息づく考えが、アスランに通用するとは限らない。

だから――友達、だった。
片一方の想いだけでは、埋められない関係性……

「ぼく、アスランの大切な人を、たくさん奪ってきたから……これで君も、辛い思いしてたら……そう思ったら――」
「それは……」

ベッドに腰をかけ、捕虜は呻いた。


「お前だって、同じだろ?」


奪い続けたキラ。
奪われ続けたキラ。
その瞳に浮かぶのは――涙。


「相子で良いじゃん」
「……違うよ」

キラは首を振る。

「それじゃ……奪われたから奪った――じゃ、堂々巡りだよ。どこまでいっても、戦いは終わらない」
「……まあ、な」

ツキン、と捕虜のこめかみが軋む。
今はもう癒えたはずの傷跡が――痛い。

「せめて、君だけは……って思ったんだ。アスランの友達、一人でも良いから守りたいって……」
「そんなに大事か? あいつのこと」
「うん」

キラはきっぱりと言いきる。

「許されるなら、親友って言いたい人」
「そっか」

彼は……アスランと馬の合う方ではない。意見の合った例など、一度も無いほどだ。
それでも、目の前にアスランを『親友』と思いたいと思っている、彼を本当に心配している人間がいて……なぜだろう、全く悪い気がしない。

少し前なら、虫唾さえ走っていそうなのに。

「もし、僕に出来る事があったら、何でも言って」
「何でも、ねえ……」

言われ、ディアッカは思案した。
腕を組み、目の前の少年に出来そうなことを考え――

「……お前さ、ミリアリアってのと、仲良かったりする?」
「ミリアリア?? ……うん。ミリィが、何?」

初めて聞く彼女の愛称に、彼は――ほんのちょっとだけ嫉妬しながら、『キラに出来ること』を頼んでみた。


「今日の俺の夕飯、あいつに持って来させて」


……彼は、何を言っているんだろう……


「……えーと……え?」
「んだから、ミリアリア。昨日から全然来ねーんだよ。ったく……顔忘れるぞ??」

キラの間抜けな声を物ともせず、捕虜はぶつぶつと続ける。どうやら彼、ミリアリアに大変興味をもっている様だ。

「おい、聞いてるか?」
「聞いてる聞いてる、うん、言っておくね」


と、言いながら。
内心、本当にミリアリアに言って良いものか――心の中で少々葛藤してしまうキラなのだった。





-end-

結びに一言
最終的にディアミリオチで(笑)
てゆーかディアさん、名前出ず(^^;


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