そんな買い物の結末は




大したことじゃないのに。
激しく悪い空気の中、買い物を済ませて家路に着く二人は、微妙な距離感で歩いていた。
ケンカしたからといって、アウルは途中で帰ることもなく。
彼はルナマリアが「自分で持つ」と言った買い物袋を、半ば強引に奪い取り、彼女の家へと向かっている。
ちゃんと、歩幅を合わせて。

「謝らないからな」
「私だって、謝るようなことしてない」

どちらも折れないから険悪な空気が続くのだが、折れようにも、折れるタイミングが見つからない。
ルナマリアは俯き……ちらっとアウルを見た。
するとアウルも、彼女を見ていて――期せずして、目が合って。

「そんなにさ……目くじら立てること?」

訊いたのは、ルナマリア。

「アウルだって、道尋ねられたら答えるじゃない。同じことでしょ?」
「同じだけど……ルナは警戒心、まるで無いから」
「警戒心って……」
「もう少し警戒しろよ。冗談抜きに」


アウルが立ち止まる。
ルナマリアも立ち止まる。
風が流れ、彼女の瞳はアウルに吸い込まれた。


「頼むから、他の男に、ほいほいと無邪気な顔見せんなよ……それ、かなり良い武器になんだから」
「武器?」
「ルナの武器」

一歩、アウルがルナマリアに歩み寄る。


「ルナの、一番の魅力」


もう一歩近づいて――……彼女もまた、一歩足を踏み出した。
分かったから。
今、彼を支配している感情の正体が。

「アウル……って、独占欲強すぎ」
「は? そんなんじゃねーって。ただ俺は、ルナが変な男に引っかかんないか心配して――」
「それを、独占欲って言うの!」

言って、ルナマリアはアウルの手を握った。

「そんな簡単にヤキモチ妬かれたら、身がもたないんだけど」
「ヤキモチでもないっ!」
「…………はいはい」
「はいはい、じゃねえっ! これは――そう、例えて言うならヤキモチって表しやすいかもしれないけど――」
「つまり、例えて言うなら独占欲なのね?」
「〜〜あーっ、もういいっ! 勝手に思ってろよ!」
「うん。勝手に思ってる」

するりと指を絡め、恋人同士の様に手を繋いで。

「だから、帰ろ?」
「……うん」

なんだか言いくるめられた感が否めないが。
……いつの間にか、仲直りしてる気がする。


〈……ま、いいや〉


目の前のルナマリアは、愛らしい笑顔を向けてくれてるし。
言いたいことは……何となくは伝わってるだろうし。


変なのが寄ってきたら、また自分が蹴散らせば良いや――


そんな事を思いながら、アウルは手を握り返した。




-end-


結びに一言
自分はヤキモチ妬きじゃないぞ、と言いたいアウルの図(笑)

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