8000踏 もっち様より

リクエストテーマ
「裏っぽいディアミリ」


御名に欲情






「ほら、食事」

無愛想に、ミリアリアは夕食の盛られたトレイを、格子の中へと入れた。そして食べ終わるのを待つ。
いつも通りの風景だ。
でも今日は……いつもと何か違った。
ディアッカの心に広がる、何かが。

実は、ミリアリアが食事を運ぶのは、三日ぶりだったりする。

「久しぶりって感じだな」
「久しくも無い」

つん、と冷たくミリアリア。
こんなやり取りすら楽しいと思ってしまうのは何故だろう。
もっと色々な表情を引き出したい……そんな欲求が、ディアッカを支配した。

「……なあ、お前……」
「何よ」

“お前”と称されたことに腹を立て、ミリアリアはジロリと睨み見る。
愛称で呼んでも、名を呼んでも、どうしても怒り出す彼女。だが、彼に向けられた侮蔑の視線は、ディアッカの中に潜んでいた悪戯心に火をつけた。

自分に対して、ほとんど興味を示さない少女。
少し驚かしたら、どんな表情を見せてくれるのか。
想像して、顔がほころぶ。

「……おもしれぇ」

ディアッカの口端が上がり――多少畏縮しながらも睨み続けていたミリアリアだったが、次の瞬間、瞳は驚愕のそれへと変貌した。

彼の手が、伸びる。
進んだ先は……拘禁室の錠。

電子ロックで閉じられた錠は、キーパッドから解除コードを打ち込まないと開かない仕組みになっている。もちろん囚人であるディアッカに、コードが教えられてるはずは無い。
しかし彼は……鮮やかな手付きで、錠の横に備えられたキーを叩いていく。

ディアッカは、実行する気なのだ。
頭の中で組み立てた……想像を。

「あんた――」
「もっと用心しなきゃダメだぜ?」

ニヤニヤしながらなぞられる、ロックの解除コード。
寸分違わず――正確に。

「俺、コーディネーターなんだから」

言葉と同時に、扉が開く。
ミリアリアとディアッカを隔てていた、鉄の扉が。

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