5555踏 猫屋様より

リクエストテーマ
「お互いに惹かれあうディアミリ」


胸を刺す破恋の痛み





あの時は分からなかった。
俺達がはじめて顔を合わせた、あの時。

何故ミリアリアが泣いていたのか。何故、怯えるように俺を見たのか。
理由はあっさり、命がけで教えられた。

俺が――ザフト兵だから。
あいつの恋人を殺した……『軍属』だから。


「バカで間抜けなナチュラルの彼氏でも死んだか?」


今更ながら吐き気がする。
どうして、あんなひどい事を言えたのか。

この頃は、そんなことしか考えていない。
捕虜になった当初は、自分の行く末嘆いてみたり、今ザフトはどんな戦況にあるのか、とか、イザークや……アスランはどうなったのか、とか……望郷の思いばかりだったのに。


彼女の涙が痛くて。
……痛すぎて。


あの涙が離れない。
思い出して、胸が砕けるんじゃないかってほど痛みが走って……だから、あいつが俺の飯を持ってきた時は、心底驚いた。

そしてまだ、彼女の姿に慣れない。
こうやって……飯を運んでくれるミリアリアの姿に。

「……食事」
「さんきゅ」

格子の下から入れられる食事一式を受け取り、俺は無言で食べ始めた。
彼女はいつも、それを無言で見守る。
苦しそうな顔で。

……そんなに俺の側にいたくないなら、運搬班代わってもらえば良いのに……なんでわざわざ運んでくれるんだろう。

思いはするが、口には出さない。
こいつ以外の人間なんて、俺の方がまっぴらごめんだ。彼女に会うには、来てもらう以外に方法が無い。キツかろうが嫌だろうが、まずは向こうに来てもらわないと……

――と考えて、不思議なことに気がつく。
彼女に――会う?

会ってどうするってんだ? 別にやること何も無いだろ。俺、鉄格子の中だし。
それ以前に、俺と彼女は敵同士なのに。

「ごちそーさん」

飯を全部たいらげ、空になった食器トレイを格子の下にくぐらせる。すると彼女は、これまた無言でトレイに手をかけ――

その一瞬。
指先が――触れた。

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