3333踏 浅伊芳乃様より

リクエストテーマ
「【トール←ミリィ←ディア】のシリアス・ほのぼの」


「それでも私、まだ……トールのこと、忘れられない……」

うつむくミリアリアに――ディアッカは声をかけられなかった。
好きだ、と告げて、返ってきた答え。


それは――連合とザフトが停戦した後の地球で紡がれた言葉。






新しい恋






オーブ近海には無数の島がある。そこには無残な『戦争』の痕跡がたくさん残されていた。
先の大戦であったり、この間起きた、ザフト艦とオーブ軍が戦った時のものだったり……戦いの悲劇を物語る機体の破片すら、そのままの形で残されている。
未だぬぐいきれぬ傷跡。この悲しい風景が、元の美しい景色と変わるまで、どれほどの年月が必要なのか。
少なくとも二年では――島の風景が変わることは無かった。

そんな物悲しい思いを抱えながら、ミリアリアは島に来た。
ユニウスセブン落下事件を受け、久々に戻ってきたオーブ。
しかし帰ってみれば、ザフトとの戦いや、首長誘拐というおかしな事態が待っていて……

何故こうも上手くいかないのか。苦々しく、ミリアリアはため息をつく。

争いが起きれば、誰かが傷つくのに。
トールのように……命を落とす人間だっている。

この場所で、命を失ったトール。
虚ろな瞳でしゃがみ込むと、ミリアリアはその手を土の上に滑らせた。
撫でる様に――


「まーだ死んだ男のこと考えてんのか?」


声は突然、ミリアリアに届けられた。
聞き覚えのある――トールとはまた違った意味で――お調子者の青年の声。
今ここにいるはずのない青年の。

〈どうしてあいつの声がするんだろう……〉

素直にそう思いながら、ミリアリアは人の気配のする方に目を向けた。

ディアッカがいる。
私服という、何とも見慣れぬディアッカが。
一瞬感じた喜びを押し殺し、彼女は冷たく口を開く。

「あんた……こんな所で何やってんの?」
「お前に会いに来たに決まってんだろ」

――バカげた事を。
どうやったら信じられると思うのか。ミリアリアは、ディアッカの図太すぎる神経に耳を疑った。
ただでさえ不安定な情勢の時期に、たかが一般兵が、私的な理由で地球に降りれるわけが無い。

「何考えてるか知らないけど、さっさと軍に戻った方が身のためじゃないの?」
「だから、お前に会いに来たんだって……ちゃんと、上から許可もらってるし」

ミリアリアは――何も言えなかった。ふざけているにも程がある。
しかしディアッカは、真顔のまま続けた。

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