222222踏 コウ様より

リクエストテーマ
「アスカガ」


ゆびきり







「お前は馬鹿だ! アホだ! 一回痛い目見て思い知れば良いんだ!」
「……そうだな。確かに痛い目を見て出直した方が良いのかもしれない」
「何開き直ってんだ! お前散々痛い目見てきてんだから、これ以上体痛めなくて良いんだよ! 分かってるのか?!」

カガリの言葉は、支離滅裂も良いところで、一言前に発した自身の声とは真逆の話が、アスランの耳をつんざいていた。
心の中だけでため息をつく。もし本当にため息をつこうものなら、今度はどんな怒号を受けるか分からない。
――非はきっと自分にあるのだろう――そう、アスランはあきらめた。確かに失態としか言いようがない。ほんの一瞬の気の緩みがこんな事態を呼び、結果として――カガリを泣かせている。
腕にぐるぐると巻かれた包帯の先は、カガリの手の中。
とてつもなく不格好な巻き型にさえ、愛しさを覚える。


「頼むから……頼むからもう、こんな無茶はしないでくれ……アス――」


包帯を巻きながら、動く唇。
それを止めたのは――アスランの指先。

アスランは止めた。自分を「アスラン」と呼ぼうとしたカガリの口を、包帯の巻かれていない左の人差し指で制した。
軽く、指が温もりに触れるか触れないかの位置で。

「違う、カガリ。呼び間違えないで」
「……そんな、この部屋には私とお前の二人しかいないのに……良いじゃないか。誰も聞いてやしないんだ」
「そうかもしれない……けど、呼ばれてないと、俺が不安になるんだ」

切なそうに、紡ぐのはアスラン。

「呼んでもらわないと、自分で『自分の名前』って自信が無くなるんだ。今の俺は……アレックス・ディノという人間なんだって自覚が、消えていってしまう」





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