12万打踏 猫屋様より

リクエストテーマ
「心温まるお話」


ちょこっとだけイイ話






それは、俺が士官学校に居た頃の話だ。
その時俺は、イザーク、アスラン、ニコルの四人でチーム組んで演習に向かってたんだけどよ、まあ、あの二人――あ、イザークとアスランな、異常に仲悪いんだよ。
や、どっちかっつーと、イザークが突っかかってってるだけっつーか……アスランも変に負けず嫌いだから、受けて立っちまうんだよ。放っとけば良いのに。

ミッションは潜入捜査。とある廃工場の最終的に最下層まで降りて、仕掛けられた爆弾を処理しろってもんだったんだけど、これがまた途中から「後方支援班」っつー名目で、一人別行動取ることになんだよ。これは俺にとって、千載一遇の大チャンスだ。あの二人に挟まれたままのミッションなんて、地獄でしかねえ。

……だったんだけどなー。
ニコルの方が先に動いちまってよ、「僕が裏方作業回りますから、三人で大元の方よろしく」なんて言って、さっさと一枠しかない「別働隊」を奪われちまってよー……
仕方ねえから、三人行動さ。



「アスラン! 貴様、なぜ俺の前を歩く!!」
「なぜって……班長が前を歩くものじゃないのか?」
「俺は貴様を班長だと、認めていない!!」
「なんっつー我儘……」



そりゃ予想はしてたけど、イザークの横暴っぷりには、さすがの俺も呆れたね。そもそも仕方ねえんだよ。班長は四人の中で「一番成績の良い人間」が担当することになってるんだから。
アスランなー。ムカつくくらい優等生だったからなー……
二人がこんなんだから、俺にはお話相手もいねえ。二人の後ろをくっついて歩いてるだけ。なんかそれもバカらしい話だろ。
模擬とはいえ、ミッション中だぜ?
もうちょっと集中してくれても良いよなー、なんて考えてたんだけど、そう考えてる時点で注意力が散漫になっちまってた。
場所は廃工場。脆くなってる所はいっぱいあるんだ。広い倉庫の桟橋を歩いてたら、突然、床が抜けやがったんだよ。


「ぅわッ!!」
『?!』


どっか掴まろうと思って手を伸ばしたけど、一瞬掴んだ床まで崩れてさ、ああ、俺このままだと重傷か?? とか色々想像したわけよ。
でも、一向に身体は地面に叩きつけられないんだよな。
痛いのは腕だけ。何かに袖でも引っかかったのか――と思って上を見たら、びっくりしたね。
アスランとイザークが、俺の腕、掴んでんだよ。
直前まで、仲良く喧嘩してた二人が、だぜ?

「何やってるんだ、貴様!!」
「ボーっとしてるから、こんな目に合うんだ!」

それ言ったら、お前らはどーよ、って思ったけどさ、なんか、それまで喧嘩してた二人が俺のために力合わせてるって思ったら、面白くなってよ、

「笑ってられる立場か、貴様!」
「……どんな状態か、自覚あるか?」

意見まで合うんだぜ? もう、笑えて笑えて……
でまあ、俺はそのまま助けられて、何事もなかったかのようにミッションに戻って、総合成績95点のダントツトップで課題をクリアしましたとさ。

おしまいおしまい。




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