30000踏 TAM∀様より

リクエストテーマ
「一人でなんて居たくないのに‥どうして?助けてくれようとするその手を、いつも、振り払ってしまう」


一人でなんて居たくないのに‥どうして?助けてくれようとするその手を、いつも、振り払ってしまう。


答えは簡単。
だってあんな奴、嫌いだもの。
きらい。
大ッ嫌い。

でも、苦しい時に手を差し伸べてくれるのはあいつ。
哀しい時、あたたかく包み込んでくれるのもあいつ。

きらい。
キライ。

……本当に嫌い??





きらい×きらい






「気分転換になって、良いんじゃないか?」

それは、バルドフェルドが何の気なしに放った一言から幕を開けた。
この広い宇宙には、プラント建設のために造られたコロニーというものが存在する。

ダミーコロニー、とでも言うか、プラントで作動するライフラインシステムの実験施設、とでも言うか。

誰もに見放された廃コロニーを、彼らは一時的に身を隠す場所として選んだのだが、中には「酸素」があり、宇宙服を着なくても、歩けるような状態にあるという。
なら、宇宙に上がってからこっち、ずっと船の中での生活が続いていることだし、気分転換も兼ねてみんなでお散歩なんてどうですか?? と提案してみたのだ。
もちろんここには、バルドフェルド自身が羽休めをしたい――という願望も含まれているが、それ以上に、緊張の連続続きのラクス達に休息を与えたい、という思いもしっかりあって。
誰も、反対などしなかった。


こうして彼らは、久々に狭い船の中から、広い大地へと降り立った。


「……まさか、天候システムまで生きてるとはなあ……」
「ほんと……」

分かった上でやってきたものの、その目で姿を確認して、サイは感嘆の声をもらした。
その後ろではミリアリアが、きょろきょろと辺りを見回している。
サイから離れないよう、軽く服を掴みながら。

燦々と輝く太陽と、陽の光を受けて芽吹く草花。それとは対照的に、建造物はほとんど崩れ去り……

とても、廃棄されたコロニーとは思えない風景である。

「こんな世界があるのですね……」

ラクスもまた、目を細めてつぶやいた。プラントでは到底ありえない光景を前に、哀しさを感じてしまう。

それは地球育ちのミリアリアも同じだった。ラクスの声を耳に受けながら膝を折り、優しく、草を撫でる。

「ねえ、サ――」

感慨深気にサイに話し掛けようとしたもの、そこにサイはいなかった。
ミリアリアの束縛を抜けた彼は、彼女の少し前方で、何やらキラと談笑している。
周りを見れば、誰もが、誰か彼かと一緒にいて。


一人なのは、ミリアリアだけ。

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