18881踏 猫屋様

リクエストテーマ
「冷静と情熱の間」


汚れてしまったココロとカラダ。
それでもあなたは、私を受け入れてくれると言うの……?





それぞれの戦い






「……ふう」

きゅ。

蛇口をひねり、水を止めたミリアリアは、したたる水滴を拭うことなく、鏡に映る自分を凝視した。

まだ、まぶたは赤い。

あの夢を見たあとは、いつもこうだ。
目覚めは悪く、頭も重い。


不の感情が、身体を支配する。


見るのは悪夢。
最愛の人を奪われた夢であり、悲しみのあまり、自分を見失った夢であり。

憎しみに囚われた悪夢……それは現実に起こったこと。


ナイフを手にした。
振り下ろしてしまった。

目を覚まして数分経つが、彼女にはまだ、あの瞬間の思念が絡みついている。


思い出すだけで震えが生まれてくる様な感情を抱き、罪を犯して――

「……だめだめ」

これは、抱いてはならないもの。

闇に向こうとする意志を、ミリアリアは半ば無理矢理、明るい方へ導こうとした。
自分が悩んだところで、誰も喜ばないのを知っている。
だからこそ、暗い顔を見せるわけにはいかないのだ。


誰に対しても。


「……そろそろ、いかなくちゃ……」

気を重く感じながら、ミリアリアはブリッジへと向かった。

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