17171踏 tata様

リクエストテーマ
「ディアッカのかっこよさを前面に出したディアミリ」


グラジオラス






人で溢れるターミナルに、ミリアリアはいた。
耳につく喧騒を鬱陶しく思いながら、彼女は電光掲示板に目をやる。目的の便はすでに到着しているはずなのに、目的の人物は姿を見せない。
彼女は――暇だった。

何と言っても、やることがない。

一応、彼女が待つ人物はたどり着いているので、売店巡りなどをして、行き違いになったら話にならない。
新聞は全て読みつくしてしまった。となると、後はロビーに高々と掲げられている、巨大テレビの鑑賞会を行うだけ。
……と言っても、これがまたつまらないもので。

《次のニュースです。オノゴロの植地開発につきまして――》

――それはもう、嫌ってほど聞いてるから。

思わずミリアリアはため息をもらした。
テレビから流れるのは全て、オーブを中心としたニュースだ。
ジャーナリストとして働き始めた彼女にとって、当たり前の事項が次々と発表されていく。

《続きまして、オーブを根城にする窃盗団ですが、メンバーは左腕に青い刺青を――》

――それはもう、一週間も前から騒いでるでしょ。

しかも目新しい情報は無い。ずっとニュースを見ていたせいか、キャスターの顔すら見飽きてきて、彼女は静かに瞳を閉じた。
ただし、ハンドバックは手放さず。

《通り魔についての情報です。現在オーブでは、女性を狙った通り魔事件が多発して――》

――それこそ、一ヶ月前から起きている事件じゃない。

キャスターの声を聞きながら、ミリアリアの眉がぴくりと上がった。実は……彼女の友人も、通り魔の被害にあっている。それゆえか、能面たるキャスターの声に、ミリアリアは苛立ちを募らせた。
いつになったら犯人が捕まるのか……そう思いをめぐらせ――

「オーブも物騒になったなあ」
「!!」

後ろからのんきな声が響き、彼女は勢いよく振り向いた。そこには、大型モニタを見やるディアッカが立っている。
彼女が待ってた――私服のディアッカ。

「――――」

久しぶり。
そう言おうとしたのに、声が出ない。私服姿を見るのは初めてで、思わず見入ってしまったのだ。
それはディアッカも同じ……というか、

「私服も可愛いじゃん」

彼は軍服以外の彼女を見たことが無い。

「もしかして、俺に会うのに頑張っちゃった?」
「何で私が、あんたに会うのに、気合入れなくちゃならないの」

言ってはみたが、説得力を持ち合わせるほどの軽装ではない。

「そっか、いっつもそんな格好してるとなると……心配だな。男とか寄ってこねえ?」
「……別に、露出が激しいわけでも、お高いブランドってわけでもないから……」

眉間を指で押さえ、呻くミリアリア。
声が降ってきたのは、その時だった。

「ディアッカあああああ!!」

何やら怒っているらしい青年の声を聞き、ディアッカの顔が歪む。

「……ッたく」

彼は呆れた様に、右手で顔半分を覆う。
何事だろう……とディアッカの後ろを覗き込むと、銀髪の青年が、怒りの形相でこちらを見ていた。
両手で一つずつ、大きなスーツケースを持って。

「イザーク。少しは公衆の面前ってこと考えろ」
「なんだとぉ?! 貴様、俺に荷物持ちをさせた上、その態度か!!」
「お前が勝手に持ったんじゃんか」

しれっとディアッカは切り捨てる。
そんな二人のやり取りを、ミリアリアは呆然と眺めていた。

何とゆーか……何なんだろう、この二人は。そんな、根本的なところから、ミリアリアは考えてしまった。
年期の入った関係であることは、見ただけで――いや、話を聞くだけでもはっきり分かる。
……のだが。
ディアッカはもちろん、多分銀髪の友人もコーディネーターだろう。その出生からして、美形になりやすい『民族』と言えるのだが……顔から体のバランスから、ここまで整っている人物達が、何もスーツケースを持った持たせたで、論議を白熱させなくても良いだろう、と思ってしまう。

「じゃ、貴様が持て!」
「……いや、両方渡されても」
「ここまで持ってやったんだ、部屋までは貴様が持つのがスジだろう!」
「…………」

腕を組み、ディアッカは数秒考え――

「じゃ、行こうか、ミリアリア」

くるっと回って彼女の肩を抱いた。

「無視するな!!」
「勝手に肩つかまないでよ!!」

結果、双方から苦情が飛び出してしまう。
そしてミリアリアは、イザークに加勢した。

「持ってきてもらったんだから、あんたが運んであげれば良いじゃない。どうせターミナル直結のホテルなんでしょ?」

この一言で、押し問答に決着がつけられた。

*前次#
戻る0