15000踏 相馬故様より

リクエストテーマ
「ミリィにベタ惚れなディアッカさん」


それは、他愛もない日常の風景から始まった。
ディアッカが整備でいつも使っている軍手が、これまた素晴らしいほどの汚れっぷりだったので、タオルを洗うついでに、一緒に洗ってやった。

ただそれだけのことだったのに。

「優しいなー、ミリィってば。愛してる〜」
「もー、いい加減にしてよ! 鬱陶しい!!」

感激したディアッカが、ふざけ半分にミリアリアに抱きついた。
たまらず彼女は腕を振り解く。

いつもより――ちょっとだけ大袈裟な反応だった。
本当に、ちょっとだけ。
なのにディアッカは、その反応に一瞬固まり――ゆっくりと、したり顔を作っていく。

まずい、とミリアリアは本能的に悟った。

どうやらディアッカ、今の彼女の返し技が、なぜだか面白く感じてしまったらしい。
なんか……色々考えている。

「……なによ、その顔」
「べっつに〜?」

ああ、この男、かなりよからぬ事を企んでいる。
もちろん彼女の読みは当たった。

こうして、ミリアリアの地獄とも言える日々が幕をあげた。





魔法の言葉







「好きだよ」

「ホント、お前ってば良い女」

「愛してる」

「あいら〜びゅ〜」


「〜〜〜〜だーもーっ!!」

あの一件以降、ディアッカはミリアリアを見つけると、開口一番愛の言葉を囁く。
鬱陶しいったらありゃしない。

「いや〜。ホント愛らしいよなー、ミリィは」
「面白がってるでしょ?! あんた、私をからかってほくそ笑んでるでしょ!!」
「へ〜。ほくそ笑むなんて難しい言葉、知ってたんだ」
「馬鹿にして〜っ! それくらい知ってるわよ!!」

だんっと大きく床を踏みつけ……その衝撃に、ミリアリアは顔を歪めた。
相当痛かったらしい。

「痛いなら痛いって言えば?」
「ぜっっっっったい、言わない……」

涙目になるミリアリア。しかし、痛いとは口が割けても言いたくなかった。
にやにやするディアッカの前で、弱音などはいた日には……想像するだけで、背筋に寒いものが走ってしまう。
が――

「強がるミリアリアも可愛いなあ」

どっちでもあまり変わらなかった。結局彼女は、悪感に襲われている。

不思議に思う。
なぜこの男は、こんなにも自分に構うのか。

「……そんなに楽しい?」
「楽しいか楽しくないかって訊かれたら――滅茶苦茶楽しい」
「……そう……」

当たり前とも言える答えに、ミリアリアは肩を落とすのだった。

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