9000踏 結花様より

リクエストテーマ
「ディアッカにミリアリアが嫉妬する話」


こんな奴、好きじゃない。
ぜったい絶対、好きじゃない。

こんなの絶対、恋じゃない――





君に微笑を






その日格納庫は――というか、AA中がごった返していた。正規クルーの他に、クサナギのクルーやMS技術者まで押し寄せているからである。
それもこれも、全てはアストレイの大がかりな整備&補強のため。
しかし、いざ補強を行おうとしても、クサナギのドックだけでは場所も人手も足りないので、AAやエターナル、ジャンク屋から支援カンパニーなどのドックを使い、大量のアストレイを分散させて、個別集中でやっつけていこう――という作戦なのである。

そんなわけで、受け入れ先の一つであるAAの格納庫も、大きなMS三機を迎え入れたために狭くなった上、機体整備にほぼ全員と言えるAA整備班+パイロットや他技能士達が詰めかけているため、恐ろしいほどの賑わいを見せていた。
半パニック状態……とも言えるか。

「大変ねー、こっち」
「そりゃ、いきなり三機も整備依頼だからなー」

話を振られたディアッカは、作業の手を止め、立ち尽くすMSに目をやった。
白と黒、そしてオレンジに彩られたM1アストレイ……彼はその足元でパソコンを開き、何やらデータを打ち込んでいて、その横ではミリアリアが、彼の邪魔にならないよう、ちょこんと座っている。
興味があるのか、画面を見てはみるが……複雑に表示される文字の羅列を、彼女が理解することは出来なかった。

「これ、何してるの?」
「OSの書き換え。普通はコックピットでやるもんだけど……」

今度はミリアリアがアストレイを見上げた。確かに今、コックピットは数人の改造班に占拠され、中に入っていけるような状況ではない。

「……ま、こっちはピンでやって、最後に落とす……で、問題ないしな」
「でも、やりにくいんじゃないの?」
「何で?」
「だって……ケーブルで繋いでるじゃない」

ディアッカの操るパソコンには、何本ものケーブルが、アストレイに向かって延びていた。
つまりこれは、アストレイのデータを全てパソコンに入れているだけではなく、中に入ってるデータをリアルタイムで送信している証――

「作り上げて最後に入れる……なら、展望室の方が集中出来そう」

――こんな、騒がしい所でやるよりも。

素直にミリアリアはそう思った。
そしてディアッカは、素直に目を丸くした。
思いっきり“きょとん”とされて、彼女もまた“きょとん”としてしまう。

「……何?」
「いや、分かってなさそーで、実は結構分かってるんだなー、と」
「それ……馬鹿にしてる??」
「は? してるわけないじゃん。こんなに喜んでるのに」

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