リクエストテーマ
「冷静と情熱の間」


「ッ……!!」

部屋に戻ったミリアリアは、電気も点けず、ベッドに顔をうずめた。


また、傷つけた。
二度と抱かないと誓った感情を、あんなに容易く爆発させてしまった。

冷静であろうとする心。
冷静であれと願う心。
実際はそんなもの……箍にすらなってくれなかった。


誰が来ても、決して部屋の扉は開けず、ただひたすら自分を責めて。



一体どれくらいの時間、そうしていただろう。
突然、しゅんっ、と扉の開く音が響いた。

「……え?」

こぼれる光。訳が分からずそちらを見ると、逆光の中に佇むディアッカと目が合った。
部屋の鍵は、かけておいたはずなのに。

「どうやって、鍵……」

半ば茫然とつぶやくと、彼は悪戯っ子によく見られる笑みを浮かべ、

「こういうのって、個々に外からでも開けれる機密の暗証番号が付けられてるもんなんだよ」
「……それを、何であんたが知ってるの?」
「えーと……企業秘密ってことで」

足がこちらに動き、扉が閉まる。
再び闇が訪れた。

さっきと違うのは――ディアッカがいるか、いないか。

「サイが心配してたぞ?」

彼はベッドに座ると、ミリアリアに手を伸ばし――

「ゃだっ!」

同時に彼女は、ガタガタと震えだした。
拒絶の意。
仕方なくディアッカは、手をゆっくり引き戻していく。

「さわら、ないで……」
「なんで?」
「だって……きたないよ……」

うつろな瞳が闇に染まる。

こんなに汚い自分を、見られたくない。


「わたし、きたない」


彼女は悲しみに震えた。

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