リクエストテーマ
「ディアッカのかっこよさを前面に出したディアミリ」


明るい表通りから、暗く陰険な雰囲気漂う裏通りへと、景色が変わっている。
周りには、潜むように息を殺す、複数の人の気配。

第六感が叫ぶ。ここは踏み込んではいけない場所だ――と。

「何だ? あわてて帰ってきたかと思ったら、お土産つきか?」

暗がりから声がする。

「勝手についてきたんだよ! ……腕見て」
「……やっぱ、分かりやすすぎじゃねえ? 腕に刺青入れる――って」
「独特の印あった方が、格好良いんだよ」

現れる三人の男。
そこにもう一人、男が登場する。

「お客――あ!!」
「あんた――!!」

ジャージ姿の男。手にはミリアリアのバック。
間違いなく、先ほどのスリだ。
しかし……追っていたはずの、ディアッカ達の姿が見えない。

「返してよ! 私の鞄!!」
「おおっと」

詰め寄ろうとしたら、後ろにいた男に腕をつかまれた。その感触は、ひどく気持ち悪い。
ゾッとする。

「……へえ。よく見れば上玉じゃん」
「本当だ。遊んじゃう?」
「――――」

目に見えるだけで四人。確実に、それ以上の人数が潜んでいる。
恐怖がミリアリアを襲った。しかし、気取られてはいけない。彼女は必死で震えを抑えた。

「じゃ、そこのお嬢さんとは仲良く遊ぶってコトで」

ジャージの男が、陰険な笑みを浮かべ、足を進め――

「楽しそーじゃねぇか」

同時に、ドスの利いた声が響いた。

「なん――」

ジャージ男の後ろにいるらしい声の主は、振り向こうとした首をめがけ、強烈な手刀をお見舞いする。

「て、めえ……撒いた、はず……」
「あんなんで撒かれるか」

倒れ様、男からこぼれたバックを手にすると、声の主は、冷徹な瞳を他の男達に向けた。
金髪に浅黒い肌――ディアッカである。
彼は険しい表情のまま、瞬時に状況を見極めた。

――14人……か。

気配を一つ残すことなく読み取り、頭の中で組み立てる。
何よりもまず、どうやってミリアリアの無事を確保するか。

「ミリアリア!!」
「え?!」

彼は名を呼び、同じタイミングで、彼女の鞄を『ぽぉん』と投げた。
宙で弧を描く様に。
その場にいた全員の目がバックを追う中、面白いことに、一歩も動かなかった持ち主の手の中に、それはすっぽりと収まった。

「あ――……」

思いもかけず、自分の手に鞄が戻って、ミリアリアは唖然としながらディアッカに目を向ける。
しかし不思議なことに、数秒前まで彼のいた地点には、倒れるスリの男の姿しか見えなかった。
その代わりと言っては何だが、両肩が大きな手につかまれる。

――ディアッカの手に。

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