リクエストテーマ
「ディアッカのかっこよさを前面に出したディアミリ」


それは、時間にしてものの数秒。
ほんの数秒かけて、ディアッカ達から少し離れただけ。
たった数秒の出来事だった。



ジャージ姿の男が走ってくる。ランニング中――と考えたミリアリアは、邪魔してはいけないと足を止め、男が通り過ぎるのを待とうとした。
なのに男は、彼女に向かって駆けて来る。

「――?!」

結局男は、ミリアリアを掠めるよう一瞬だけ触れ、そのまま走り去っていった。
瞬間、彼女が捕らえたのは、腕の刺青――しかも、青色の。

「……ッああ!!」

刺青に目がいったおかげで、判断が遅れてしまった。
――バックが無い。

「ミリアリア!!」

声に驚いたのか、ディアッカとイザークが、急ぎ彼女の元へ走り寄る。

「大丈夫か?!」
「大丈夫じゃない! 鞄が……!!」
「鞄って……」

キッとにらむ先を走る一人の男。その手には、ミリアリアの持っていたハンドバックが握られている。

「あいつか!!」
「例の窃盗団よ!」
「窃盗団、だとぉ?!」

俄然、イザークがやる気を出した。
一方で、ディアッカは呆れる。
――が、

「大規模な窃盗団って、スリ団かよ」
「どうしよう……あの中には……」

不安に揺れる瞳を見て、ディアッカの闘志にもまた火がついた。

「ちゃちゃっと取り返してくっから、ここ、動くなよ!」
「え?!」

ミリアリアは、走る二人を呆然と見送った。彼らが取り返してくれれば、万事解決――と見守りたいところだが。

「……ん?」

待つって、一体どれくらい待てば良いのだろう。すぐ捕まえてくれれば良いが、てこずったら……最悪、何時間単位で待つ羽目にならないか?
それは勘弁願いたい。

「二人とも、ちょっと待って――わっ!!」

だが、慌てて走り出したおかげで、前を歩いていた男性にぶつかってしまった。

「ごめんなさい……?!」

つかまりながら謝って、男の腕に不思議なものを見つける。
青いあざ――いや、刺青。
さっき見かけたものと、ほぼ同じもの。
それは左腕――

「くそっ!」
「あ、待ちなさい!!」

逃げる男。ミリアリアは思わず、もう一人いた窃盗団員を追いかけた。

「待てって言ってるでしょ!!」

そう言われて、はいそーですかと止まる犯罪者はいない。

危ない……そう思いつつも追いかけるのは、ジャーナリスト魂に火がついてしまったからか。
追いかけるのは良い。しかし、常に周りを注意して行動しなければ、大怪我をする……それを忘れたつもりは無かったが、頭から飛んでしまっていた。

「!!」

気づいた時には遅かった。

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