リクエストテーマ
「ディアッカのかっこよさを前面に出したディアミリ」


――明日正午、オーブに着くから出迎えよろしく。


そんなメールがミリアリアの元に届けられたのは、昨日の夜、それこそ寝ようと考えていたころだった。
まず我が目を疑い、連絡を取る。

――冗談よね?

一言短く送ったところ、一分経たずして答えが返ってきた。

――まじ。

こちらも短く、しかも仮名二文字。
ミリアリアは頭を抱えた。
別にディアッカは彼女にとって、恋人でもなければ単身赴任中の旦那でもない。なのに『出迎えよろしく』って――

――用事、あるんだけど。

意地悪がてら、もう一度メール。
返信は、やはり一分とかからなかった。

――ひでぇっ! 俺より用事の方が大事かよ!!
――大事。

悪ノリしながら速攻送り返し――

――正午到着予定XSO−872便だから。


問答無用か!!


すかさず返ってきたディアッカの主張に、ミリアリアは怒りを枕にぶつけた。



という事情があって、ミリアリアはマスドライバ内臓ターミナルにやって来た。
釈然としないものを感じながら彼女は出迎え、そして今、燦々と輝く太陽光を浴びながら、ディアッカ達が荷物を置いて戻ってくるのを待っている。
待ってろ、と言った以上、これからミリアリアを引き連れ、どこかに行こうとしてるのだろうが……

……このまま帰っちゃおうかな……

思いながらも実行しないのは、会えて嬉しいから。もう少しこちらの事情も考えてくれれば、喜んで来てやったと言うのに。

「……あーあ」

バックを抱きしめ、呻く。
晴れ渡る空。天気はとても良いのに、悪い予感がするのはなぜだろう。

「は? ついてくんの??」
「まさか、遊び歩くつもりじゃないだろうな!!」

そんな考えをめぐらせる内に、遠くから、すでに聞き慣れたレベルまで達している二人の声が聞こえてきた。

「あれ? 遊びに来たんじゃねーの?」
「な――」

ディアッカの参戦に、イザークは絶句する。

「わざわざこんな所まで観光に来るかあっ!!」
「遠いからこそ、来甲斐あるじゃんか」
「……貴様と言う奴は……!」

彼らは、ミリアリアの横に着いてからも、そんな言い合いを繰り広げる。

――仲良いなあ、この二人……

のほほんと、そんなことまで頭に浮かぶ。

しかし、遊びに来たんじゃないとなると、一体彼らは、どんな理由ではるか遠いオーブまで足を伸ばしたのか。
聞きたいのは山々だが、如何せん二人とも、仲良くおしゃべりしたまま彼女を総無視だ。
折角待っていたのに、ほっとかれるのも面白くない。

「……どうするの? 遊びに行くの? それとも、アスランにでも会いに行く?」

彼女は皮肉をたっぷり込め、二人の元同僚の名前を出してみた。
すると――

「なんで?」
「なぜだ!」

息ぴったりに返ってきたのは、彼女としては、驚くべき反応だった。
同じ隊に属していたのだから、てっきりディアッカとアスランは仲が良いものだと思っていたが、そうでもなかったらしい。
思い起こせば戦争中も、二人が仲良く語り合っている様を見たのは、あまり無かったような……

「変な気、使わなくて良いから。俺、単純にお前と歩きたかっただけだし」
「ある……く?」
「だって、一緒に外歩いたこと、ないじゃん」

――確かに。
ディアッカと過ごしたのは、全て戦艦の中。外の景色を二人で見るなんて、一度も無かった。
あの戦火の中では、仕方の無いことではあるが。

「そゆわけだから、イザーク。今日は遠慮して」
「なんで俺が省かれる!!」

再び――堂々巡り。
ミリアリアは呆れ果ててしまった。

「……私、ジュース買って来る」

一応宣告して、彼女は近くの自動販売機へ向かった。

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