リクエストテーマ
「ミリィにベタ惚れなディアッカさん」


「良いか? 女性に嫌がらせするなど、男の風上にも置けない行為だぞ?!」

熱く語るアスランがいる。
ディアッカは、半ば呆れていた。


〈何でいきなり、お説教大会始まってんだよ……〉


アスランに無理矢理、展望室まで連行されたかと思えば、床に正座させられ、この状況である。
なぜか説教理由は――ミリアリアへの例の『愛の言葉囁きまくり事件』について。

彼女の友人であるサイやキラからなら分かる。だが、全く関係の無いアスランに、どうこう言われる筋合いは無い。
よって、自然とディアッカは不機嫌になっていった。

「聞いてるのか? ディアッカ!!」
「はいはい、きーてますよー」
「お前っ……!」
「二人とも、落ち着いて! ね?」

ふてくされ気味に答えるディアッカが勘に触ったのか、アスランのボルテージは一気に高まり――そこに、成り行きを見守っていたキラが止めに入った。
それほどまでに、険悪と感じられる空気で。

「俺は落ち着いてるぞ」
「いや、十分喧嘩腰だから」

半眼で抗議するディアッカなど、サイからツッコミを受ける始末。

「それにしても……」

ふと思い出して、キラはディアッカに尋ねた。

「いつの間に『ミリィ』って呼ばせてもらえる様になったの?」

彼の記憶が正しければ、最後にディアッカがミリアリアと話しているのを聞いた時は、名前すら、呼んだ瞬間に怒号が返ってきていたはずだ。
きょとんとしながら、ディアッカは返す。

「めげずに呼び続けたら、怒られなくなった」
「すごい根性だよ……」

本人から名前呼びを許す理由を聞かされているサイは、頭を抱えるしかない。
そんな中、衝撃発言は飛び出した。

「だからさ、好きって言い続けたら、俺のこと好きになってくれるかもしれねーじゃん?」
『――?!』

突然の告白に、三人は固まった。

今――不思議な言葉を聞いた気がする。
好きになる??

「……なんだよ、その顔」

よほど三人がおかしな顔をしていたのか、ディアッカは眉をぴくつかせた。
サイは、仰天の眼差しを彼に向ける。

「ディアッカ……ミリィのこと、好きのか?」
「そりゃあもう、心の底からミリィ命」

答えはあっさり返ってきた。あっさりすぎて、対応に困る。

「……それを、真剣に伝えたことは?」
「無いなあ」
「そっちが先だろ!!」

叫ぶは――アスラン。

「でもなあ、俺、真剣に告白する様なタイプじゃないし」
「そこを真剣に言うから伝わるんだろ!」
「そーゆーもんか?」
「そーゆーもんだ」

ふんぞり返るアスランを見て、ふとディアッカから、笑みがこぼれた。
アスランのこめかみが引きつる。

「……何が可笑しい」
「いや、戦艦の中で交わす会話じゃねーな、と思って」
「……確かに」

キラも笑った。
戦艦の中で、男四人が交わす話の内容が――実は恋の話とは。違和感たっぷりの状況でありながら、同時に安心してしまう。

張り詰めた空気、緊張だらけの世界において、恋の悩みを話せる現実。
こんなごく普通のことを『貴重』だと感じる日が来るとは思わなかった。

そして――思う。
彼らの思いに応えたい、と。

「なら、ちょいとばかり、真剣になってくるかな」

ディアッカは重い腰を上げた。

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