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「ディアッカにミリアリアが嫉妬する話」


……喜んでる??
訳が分からず顔をしかめていると、彼は腹立つほどの笑顔で言い切った。

「そんだけ俺のこと、見てるって事だろ?」
「な――んでそうなるわけ? この状況見れば、誰だってそう――」
「思わないっしょ。普通、集中できる所で上げるとしたら、自分の部屋じゃねーの? いきなり邪魔入ったりしないし。俺のことちゃんと分かってないと、展望室は出ないよな〜」
「う……」

にやけるディアッカに、ミリアリアは反論する事が出来ない。
そう、彼女は知っている。ディアッカは落ち着きたい時、決まって展望室に行くことを。
あの静かな空間で、彼がよく想いふけっていることを。
時折りパソコンを持ち込んで、ディスプレイとにらめっこしてる様だって目撃している。
だから『展望室』という単語が出てきたのだ。

「まあ確かに、こんな騒がしい所で集中かき乱されて、何度も間違ったコード入力するよりか、展望室で静か〜に作り上げた方が合理的なんだよな。てなわけで――展望室デート、する?」
「しないっ!!」

断り様、立ち上がるミリアリア。
その表情は……かなり歪んでいる。

〈……からかいすぎたか??〉

これ以上は刺激しない方が良さそうだ――ディアッカは、賢明な判断を下した。
いつもここでもう一押しして、撃沈している。穏便に運ばないと、また二、三日口をきいてもらえないかもしれない……と考えて。
ようやくディアッカにも、学習能力が身についてきたようだ。

「……ま、騒がしくてもこっちでやった方が捗るだろうし、大分時間もかかるから、俺のこと気にしないで、先に飯とか食っちゃって」
「そんなにかかるの?」
「まだ一機目だしな。三機とも、OS今日中に調整しとかねーと、明日の試験運転に間に合わねーし」
「でも……」

ふと、ミリアリアは不安な顔を見せた。
ディアッカの身体を心配している。
それが分かってか、ディアッカから優しい笑みがこぼれた。

「大丈夫だいじょーぶ。疲れたらちゃんと休憩取るし、それにほら、頑張ってるの、俺だけじゃないし」

そう、ディアッカだけではない。周りを見ればスタッフ一同、目の回る様な忙しさの中、一つ一つ自分のやるべき事をこなしている。
逆に言えば、何もしてないのはミリアリアだけ。

「…………」

思ってしまう。
自分だけおしゃべりしていて良いものか。何か、手伝えることは無いのか。
しかしミリアリアは、学生時代は工学部に籍を置いていたが、MSに関してはド素人。何がどうなっているのかも分からない。
そんな彼女に出来ることと言えば……

「……ね、のど渇かない?」
「ああ、まあ、そこそこには」
「何か持ってこようか」
「んじゃ、眠気覚ましに熱いコーヒーひとつ」
「分かった」

少しでも、仕事のしやすい環境を作り上げること。
ミリアリアは急いで給湯室へ向かった。とびっきりのコーヒーを飲ませてあげようと。

「ミリィの作ったコーヒーか……初めて飲むなあ」

一人取り残されたディアッカは、うきうきしながらキーを弾いた。喜びのあまり、打つスピードも何となく速い。
そんな彼の背後に、人の気配が生まれた。

ここは人でごった返している格納庫。常時辺りに人の気配は漂っているが、背後で止まったのは、今のところミリアリアだけ。
しかし――彼女じゃない。

――誰だ??
彼が振り向いたことで、背後に立つ人物は、ようやく声をかけた。

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