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「裏っぽいディアミリ」


「さ、逃げ場は無くなったな」

足音が近づく。
どうすればいい?
どうしたら、この場から逃げ出せる??
考えても――答えは出ない。
答えが出る前に、ディアッカが到着してしまう。
ミリアリアの側に。

――上に。

「!!」

気がつくと、本人、何が起こったのか分からないほどの速さで、仰向けに倒されていた。
見開くまなざしの先に、ディアッカがいる。
彼女の身体に覆いかぶさろうとする、ディアッカが。

ほんの少し前まで、格子越しでしか会っていなかった男が、こんなに側にいる。
ここまで接近するのは……ナイフで切りかかった、あの時以来ではなかろうか。

「思い出すなあ、あの時のこと」

言いながら、ミリアリアの首に右手を乗せる。
力は込めず、添えるように。
無意識に、彼女はごくりと喉を鳴らした。

――こわい。

「俺、本気で殺されるかと思ったよ」
「……私を、殺すの?」
「まさか」

狡猾な笑みが、ミリアリアの恐怖を掻き立てる。
だが、本人の言う通り、ディアッカに彼女を殺す意志は、全く無い。

「ただ……」

右手を少し下にずらし、鎖骨の存在を確かめながら、

「凶暴な性格はさておいて、身体はかなり好みなんだよな」
「か――」

ようやくミリアリアは、身体を支配する恐怖の正体を知った。
死の恐怖ではない。

――身体を汚される恐怖――

「好み――って、あんた、コーディネーターでしょ?! わたし、ナチュラルなのに――」
「女にコーディネーターもナチュラルも無いだろ」
「あるわよっ!! コーディネーターの方が美人だし、スタイル良いじゃない?! 私なんて、寸胴だし、胸ないし、顔もそんなにかわいい方じゃないし!!」

何とかしてディアッカのやる気を失せさせようと、ミリアリアは説得を試みた。多分――自分が何を言ってるか、半分も理解出来てないだろう。
それほど必死だということなのだが……ディアッカには全く通用しなかった。

「手に余るほどでかい胸っての、あんまり好きじゃないんだわ。かと言って、細身のガリガリってのもなー。やっぱこれくらい、弾力のある方が……」
「それって、私が太ってるって事ぉ?!」

『弾力のある』という一言で、怒りを露にするミリアリア。
しかし――長くは続かない。

「自分で寸胴って言ったくせに」

突き放す言葉。
ほぼ同時に、ミリアリアの頭が真っ白になった。


大きな褐色の手に、柔らかな胸を包まれて。

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