リクエストテーマ 「裏っぽいディアミリ」 拘禁室に入る時、そして出る時、必ず使われるキーパッド。彼は見ていたのだろう。この間……拘禁室から出された時、解除コードを打ち込んだ手の動きを。 それでコードを再現できるのだから……恐ろしい能力だ。 「……何のつもりよ」 「別に?」 格子の中から姿を現すディアッカを前に、ミリアリアは本格的な恐怖に襲われ始めていた。 相手が『ザフト兵』とか『囚人』とか……そういった類で生まれてくる恐怖ではない。 身体の奥底から、本能的に危機感が湧いてくる。 恐怖の正体は、よく分からない。 でも……ここにいては駄目だ。 鳴り響く警告音に従い、ミリアリアは身を翻す。 逃げなくては。 ここは――危険!! しかし、相手はディアッカ。簡単に逃がしてくれる輩ではない。 背を向けた瞬間、左手が捕まってしまった。 「逃げたい時は、もっと間合い取ってからにしないと」 「は、離してよ!!」 「はいはい」 即却下されるかと思いきや、意外にもディアッカは、あっさりとミリアリアの訴えを受け入れた。 ただし――手を離したのは、彼女を格子の扉まで引きずってからだったが。 「ほらよ」 「う――わ!!」 疑問符を飛ばすミリアリアを中に放り込み、彼女の背中を押す。 ベッドに向かって。 「痛っ……」 バランスを崩し、倒れ込んだ囚人用のベッドは、とても硬かった。いつも使っている自室のものですら硬いと思っていたが、向こうの方がよっぽどマシである。 何せ、ベッドの上だと言うのに、とっさに身体を庇った左手が、赤く擦れてしまっているのだから。 〈これが、捕虜の扱い……〉 こんな細かなところからも、ディアッカの不遇の扱いを窺い知れてしまう。 軽く生まれる同情心。しかしそれは、続いて聞こえてきた音によって打ち消された。 ――かしゃん。 身が凍りつく。 今のミリアリアは、彼に同情できる状況ではない。 扉が、閉められた。 |