リクエストテーマ
「お互いに惹かれあうディアミリ」


自分でも分からない。
何故私は、こんなことをしているの?


捕虜のご飯を運ぶこと――それがこの頃の、私の日課になっている。
断ろうと思えば、断れたはずなのに……うなずいてしまった。
運ぶ――と。

拘禁室に入ろうとして、無意識にも止まる足。
小刻みに震える腕。

……あいつに会うのは怖い。
嫌がおうにも『あの時』のことを思い出してしまうから。

私が傷つけた人。やり場の無い憎しみをぶつけた、唯一の人。
トールを殺したのは……別の人なのに。

息を呑んで、心を落ち着け、私は拘禁室へ足を踏み入れる。
あいつと目を合わさない様にして。

「……食事」
「さんきゅ」

言い様、トレイを鉄格子の中に入れる。彼は受け取ると、無言で箸を取り始めた。
自然と目が、食べてる姿を追う。

怖いのに。
こいつの顔なんか、見たくないはずなのに。
あの時から……刃を振り上げたあの時――ううん、もっと前。
通路で初めてすれ違った、あの時から。


目が……離れない。


私は何を考えているんだろう。

今、この胸に灯るのは……ザフト兵への憎しみ? それとも、傷つけてしまった負い目?

違う……そんな、不の感情とも思えない。

これは何?
どこにも当てはまらない疼きが、じわじわと身体を縛っていく。

「ごちそーさん」

彼の声で、私の意識は現実世界へと引き戻された。見れば――お皿は全て空になっている。
私は慌ててしゃがむと、格子の下からくぐらされたトレイに手をかけ――

偶然――指先が触れた。

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