リクエストテーマ 「ディアッカの仕草にどきりとするミリィ」 ――どくん。 ディアッカがブリッジを出る直前、ミリアリアの心臓は、これ以上ないほどの大音量を響かせた。 誰にも聞かれない、彼女の身体の中だけを駆け巡った音。 だが、彼女の心情などお構い無しに、ブリッジはどんどん忙しくなっていく。ミリアリアも自分の席へ颯爽と戻ると、モニタとにらめっこを始めた。 頬は赤く、心臓は早鐘で。 落ち着こうと深呼吸して、再びモニタに目を走らせ――でも、モニタを見れば、キーボードに目を落とせば、先ほどのディアッカの、真剣な表情が脳裏を横切る。 誰にも気付かれないように、平静を装ってはいるが――あの衝動は、後遺症みたいに居座り続け、彼女の心に、少年の影を落とした。 たわいもない、ただの挨拶。 いつもモニタ越しに見ている仕草をナマで見て……思わずドキッとしてしまった。 しかも、ディアッカの腕が伸びた時にも心臓が震えたから、計二回も。 そう、二回。 訪れたのは……わずか一瞬ずつ。 その一瞬のときめきが、ミリアリアに大きな動揺をもたらした。 「――っあーーーーー!!」 舞台はミリアリアの自室に戻る。 ベッドの上で。 思い出して、また彼女の暴走が始まった。 顔を隠し、ごろんごろんと左右に転がり―― 「……なんで」 ただちょっと、いつも画面を通してしか見ない動作を、間近で見ただけではないか。 彼はそんな、大したことなどしていないのに。 真っ暗な部屋の中、ディアッカについて考える。 ザフトを裏切り、AAに乗り込んだ男。 飄々としていて……なぜかよく、構われて。 いつもの、何気ない仕草で、私の心を惑わせた男―― 今まで覚えもしなかった感情。 たった一度の、たった一瞬のときめきが――ミリアリアの心の中で、ディアッカの存在を大きくする―― -end- 結びに一言 たった一瞬の衝動で価値観が変わる瞬間……みたいな? |