リクエストテーマ 「ディアッカの仕草にどきりとするミリィ」 「何かしら」 すぐさま彼女はメッセージを読もうとした。しかし――ロックがかかってるのか、電文を開くことが出来ない。 それはエターナルから発信されたもの。この頃は三隻間での電文のやり取りも、ザフトや連合のハッキングを警戒して、メッセージに暗号ロックをかける様にしたのだが……これはかなり強力だ。 「苦戦してるじゃねーか」 「うるさい」 ミリアリアは集中し、かけられたロックを解こうとするものの、中々上手くいかない。 外そうとしては失敗し、解けたと思えばエラーが起き…… 「〜〜ちょっと貸せ!」 「え?!」 一向に解ける気配の見えないプロテクト。見かねたディアッカは、思わずキーボードに手を割り込ませる。 その瞬間――突然伸びる腕に、ミリアリアの心臓は、わし掴まれるような衝撃に支配された。 一瞬だけ。 そんなことなど露知らず、ディアッカは真剣な面持ちで、片手でキーを叩きながら、モニタを注視する。 「何だよ、このプロテクト。新手の嫌がらせか?」 そう言いながらもディアッカは、幾重にもかけられたロックを、鮮やかな手付きで解除していく。 ミリアリアは……思わず見入ってしまった。 真剣なディアッカの顔は、あまり見たことがない。その上、彼女が全く歯の立たなかったプロテクトを、どんどん外しているのである。 〈……すごい〉 素直に、そう感じざるを得ないディアッカの姿。 恐るべき速さで解除されていくそれは、数分と経たないうちに、全て外された。 「よっしゃ、全クリッ!」 「ゲームじゃないんだから」 ため息をつくと、ミリアリアは姿を現した電文を読み…… 「あんたちょっと邪魔」 「え」 お礼の前に、そんな言葉が飛んできた。仕方なくディアッカが避けると、ミリアリアは席を立ち、電文を印刷にかけ、それをマリューへと渡しに行く。 口頭で伝えなかったところを見ると、急ぎの伝達――というわけではなかったらしい。 ……急ぎの用件に、あんなプロテクトをかけられても困るが。 マリューが電文を読み、クルーに指示を出し……ブリッジに中は、急に慌しくなっていく。 それを遠巻きに眺めながら、ディアッカは言った。 「サイ、俺戻るわ」 「もういいのか?」 彼が来た理由を事細かに知ってるサイにとっては、驚くべき発言だった。 ディアッカがブリッジに入って、まだそんなに時間は経っていない。ミリアリアとは、話すらまともにしていないのに。 「さすがに、なあ」 苦笑がもれる。 ディアッカだって、仕事を邪魔しようとして来たわけではない。ただ……ここ数日、ミリアリアと顔を合わせることが出来なかったから。 どうしても会いたくなって、来てしまっただけだから…… 忙しさを見せるブリッジで、彼女の仕事の邪魔をするわけにもいかない。 あきらめ、ディアッカは扉へと進み―― 「あ――ディアッカ!!」 呼び止めたのは――ミリアリア。 「ありがとね」 「――ああ」 一瞬、驚く。 ミリアリアにお礼を言われるなど、滅多に無いことだ。 「またこーゆーことあったら、遠慮しないで呼べよ」 言ってディアッカは、あのポーズを見せた。 出撃の際、ミリアリアにだけ送る儀礼。 指で作った『平和の象徴』を、自分からミリアリアに送る、あの仕草を。 「じゃ」 シュンッ!! 重たい空気の音と共に扉が開き、ディアッカはブリッジを出た。 一歩だけ進んで、扉が閉まった音を聞いて、彼はその場にうずくまる。 「あー……新しい作戦でも考えなきゃダメだな、こりゃ」 それはもちろん、対ミリアリア用の作戦。これまでの勇猛果敢なアタックが全く効いていないとなると、角度を変えた攻め方をしなければ、到底歯など立ちそうもない。 今回の一件で、彼女が自分の事を見直してくれれば話は別だが……期待できるほどの効果があるとも思えない。 ディアッカは自分の置かれている現実を見据え――寂しそうに格納庫に戻っていった。 |