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「【トール←ミリィ←ディア】のシリアス・ほのぼの」


愕然とする。


トールを好きな自分。
でも……断る理由は、ディアッカを想ってのことだった。

なぜ――??

立ち尽くすミリアリアを前に、ディアッカは、なおも言葉を投げかける。

「……お前さ、トールを忘れるのが怖いだけなんじゃねーの? あいつに悪い……って。それ……そいつを好きって言えるのか?」

それは彼がAAにいた頃から――彼女を見るたびに感じていたこと。ミリアリアが傷つくのを恐れ、ずっと心の中にしまっていたことでもあった。

昔、自分がふられた時でさえも。

しかし今は違う。彼女は、自分の抱える矛盾点に気づき始めている。
これが、先に進む突破口になれば……そんな思いさえ含まれていた。

そしてミリアリアは……反論できなかった。


この世にはいないトール。
新しい恋へと目が向けられないのは、トールへの恋心よりも、別れたわけでもない恋人を忘れることへの、罪悪感だと気付かされて。

「何なのよ、あんた……」

座り込み、手を地面につけて身体を支え、ミリアリアはぽろぽろ涙を流した。

「私のことなんか、放っておいてよ……」

トールの死は吹っ切ったけど、トールへの想いは色褪せない――そう信じてきた自分の気持ちが、音を立てて崩れていく。
結局……全てタテマエだった。

自分が傷つかないための。

「放っておけるかよ」

ディアッカもしゃがみ込んで、ミリアリアと目線を合わせる。


「好きだから、放っておけない。好きだから――俺のこと、見てほしい」


これが彼の本音。
いくらトールのこと好きでも良いと言ったところで、その願望を消すことは出来ない。

「……望みナシ?」
「……分かんないよ……」

ミリアリアから、拒絶を表す言葉は出なかった。
目の前に現れたディアッカを見て、嬉しかったのは本当。寂し気な表情に、心も動きかけた。
それは彼がかつての仲間だからか、はたまた気になる存在だからなのか……今のミリアリアには、判断がつかない。

一方、悩むミリアリアを前に、ディアッカは時計に目をやった。
映し出される時間に、思わず舌打が出る。

「……あのさ、続きは移動しながらでも良いか?」
「移動? どうして……」
「シャトル発射まで、三時間切っちまった」
「は?!」

降下から一週間後の今日、帰りのシャトルが地球を飛び立つ。イザークから、シャトル発射の時間は変えられないと、最初から宣言されていた。
移動時間を考えると、かなりギリギリである。

三時間、という数字に、涙を流していたミリアリアの態度も豹変した。

「どこの基地よ!! カーペンタリア?! あーもー、何であんたそんなにバカなのよ!!」
「キツイこと言ってくれるねー。じゃ、ちょっくら船上ドライブとでも行きますか!」

ミリアリアの荷物をとり、走り出すディアッカ。
おかげで彼女は、追いかけることしかできなかった。

「ちょっと……待ちなさいよ、ディアッカ!!」

その瞬間――まるで二年前のような空気が二人の間に流れた。
AAで過ごした、わずかな期間の懐かしい空気が。

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