アスラン×カガリ
二人の思いが通じる瞬間


「アス、ラン?」


背後から抱きしめる人物の名を、カガリは小さくつぶやいてみる。すると彼は、呼応するかのように、その腕に力を込めた。
やっぱり彼だ。アスランだ。

「ごめん、カガリ。違うんだ……嫌うとか、そんな……そうじゃないんだ」
「……え?」

かすれて、声が上手く出ない。
声を聞いて、顔を確かめて……それでもなぜか、アスランに「抱きしめられている」実感が沸かない。
それは現実のことなのに。
十数秒背後から自由を奪った後、アスランはカガリの身体を自分へと向けさせた。
視線を絡ませ、その風格ある瞳に吸い込まれそうな感覚に陥りながら、アスランはなおも訴える。

「ごめん。カガリがそんな風に思ってるなんて、考えもしなかった……」

懺悔の言葉は、途切れることなく続いた。

「俺はただ……君を、あの場に居させたくなかっただけなんだ」
「……その理由を言ってくれないと、私は……」

――納得なんか、出来るわけが無い。
咽元を通り過ぎかけた言葉を、彼女は飲み込む。なんとなく……喧嘩腰になりそうな気がして、嫌だった。

「だって、あそこは……」

口ごもるアスラン。

「あそこは……男だらけだから……」
「は?」
「……君を、変な目で見る奴だって……少なくないんだ」

つまり、それは――


「……嫉妬?」
「違う!! カガリがあまりに無防備だから――」

いや、同じことだ、とアスランは言葉を切った。
心配だから。
他の誰かが、彼女を汚す姿を想像する――そんな場に居合わせることすら、不快極まりないのに。


「こんなに――好きにさせておいて――……頼むから、もっと『女』の自覚を持ってくれ……」


アスランの一言が、カガリの心臓を貫いた。
好き。
それは初めての言葉。
初めて、アスランが『好き』と言った。
それだけで、喜びが爆発しそうになる。

「バカだな、お前」

フと笑い、カガリはアスランの髪を撫でる。

「私はもう、お前しか見えてないのに……」
「カガリ……」

そんな二人を眺めながら、キラは心を撫で下ろしていた。


――もう、大丈夫かな?


完全に、仲直りだ。
いや、その一歩先を歩き出している。自分がいなくても大丈夫――と言うより、お邪魔虫かもしれない。そんなことを考えながら、彼は二人に悟られないよう、踵を返した。
そして月明かりの下に、カガリとアスランが残される。

「アスラン」
「うん?」
「……好き」
「俺も」


静かな世界。
穏やかな景色。
甘い囁きが生み出す幸せに浸りながら、二人はお互いを感じるように、優しい優しいキスをした――





-end-

結びに一言
カガリの恋が叶うまでのお話。カガリが[恋する乙女]すぎたか、とちょっと反省中。


どーでも良い裏話としては、

[離さない。
二度と離さない。
君は俺の唯一の暁――……]

ってモノローグを入れようと試みたものの、入れ場所が無くてボツらせてみる(どんな裏事情…)

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