アスラン×カガリ
二人の思いが通じる瞬間


「ここは君とは無縁の場所だ。さっさと自分の仕事場に戻れ」
「……それ、ちょっとキツすぎない? アスラン」

カガリを不憫に思ったか、少し離れたところから傍観していたキラが、仲裁役にかって出た。
さすがに、ただ黙って見ていられる状況ではない。

「君の言いたい事も分かるけどさ、そう、頭ごなしに怒っても……」
「柔らかく言っても、カガリには通じないだろ」

アスランの言葉が、辺りに冷たい空気をばら撒いていく。
そんな中、カガリはひたすら困惑していた。もしかして、自分の何かがアスランを怒らせているのだろうか。
でも、何が?
思考はひたすら、ぐるぐると回り続ける。
回った挙句――

「ほら、キラ。そろそろテストの時間だ。早く行かないと」
「うん。けど、カガリは……」
「――カガリ!」

名を呼ばれ、彼女はびくんっ、と身体が跳ね上がるかと思うくらいの衝撃を受けた。
ゆっくり、恐るおそる、瞳を上げる。目に入るのは――やはり、眉間にしわを寄せたアスランの顔。


「何か用があるなら、後で聞きに行く。頼むから出てってくれ」


まるで、手のかかる子供を言いきかせようとするように。
それがとても寂しくて
……悔しくて。
アスランが必要としているのは、キラ。



自分じゃない。
必要どころか、邪魔者扱いされている……



その現実は、カガリに大きな痛みと嘆きを与えた。
この場にいるだけで、すごく、辛い。
放心しながらも、カガリは一歩、後ろに足を引く。それで「帰る」と思い込んだアスランは、ため息と共に踵を返した。
気配でキラも自分の後に続いているのが分かり、軽い安堵を覚えた――まさにその時だった。


「――え?! カガリ?!」


後ろから、驚くキラの声が響く。
何事かと振り返ると、そこにいるはずのキラは居なかった。慌てて辺りに視線を走らせると、一秒かからず、予想だにしなかった光景が飛び込んできた。


カガリに腕をつかまれ、引っ張られていくキラ――


「ちょっと待って、カガリ! いきなり何――」
「うるさい! 黙って付き合え!!」
「え? ええ?!」


無下に抵抗できず、キラは引っ張られるまま、カガリの向かう格納庫の出口の一つ――エレベーターに連れ入られてしまう。

「おい、カガリ、何を――」
「キラはもらっていくからな!!」
『――は?!』


一瞬、ポカンとしてしまった。
脳が、与えられた言葉の解釈を拒絶する。
その一瞬の足止めは、新たな誤解の火種を生み落としていった。


「お前になんか、キラは渡さない!!」


閉まるエレベーター。
残されるアスラン。

「……キラは、渡さない……??」

少女の言葉を復唱するアスランの顔は、どんどん青白くなっていくのだった。

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