リクエストテーマ 「天邪鬼なミリィに振り回されるディアッカ」 結局、小腹が空いた、という話に落ち着き、近くのカフェに入ることになった。コーヒー二つとデザートを頼み、話は自然と、今観たばかりの映画のものになる。 一応、盛り上がった。 あくまで、一応。話の主導権を握っているディアッカは、ミリアリアが別の方に気が散っていることに気付いていた。 「……そんなに気になる?」 「え?」 「や、他の人達の目」 ミリアリアが気にしているのは、周りの「目」だ。映画館に行くまで、着いてから、そして出てここに入った後も、二人は周りから事ある毎にじろじろ見られていた。 そんなにバランス悪いだろうか、と思う。 それ以前に、そこまで気になるほど取り合わせ悪いだろうか、とも。 今度から、どんな服にするか打ち合わせして出た方が良いか……と考えるディアッカに、ミリアリアが本音を言った。 「周りの目、気になるって言うか……鬱陶しい」 「鬱陶しい、か」 背もたれに身体を預け、ディアッカは辺りを見回した。 オーブでは、ディアッカはその容姿自体非常に珍しく、見られることなど慣れっ子だ。ゆえに視線など全然気にならなかったが、実際どれだけの人間に見られているかを調べてみると、これまた結構な数で。 ミリアリアが気にするのも、仕方ないかもしれない。 「こりゃやっぱ、俺のせいか?」 「に決まってるじゃない。あんたがそんな格好してくるから……」 「……じゃ、少し離れてみる?」 「?!」 びっくりして、ミリアリアは顔を上げた。 どんな意味で言われたのか、把握し切れなくて。 「んだから、俺が一緒にいるから、こんな視線で蜂の巣にされちまうんだからさ、俺何分か別の場所に移動するか? って」 「それ……私がここに一人で待ってるってこと?」 「おう」 「それ、余計目立つじゃない……」 カップ二つ。 人は一人。 「……私は、目立つのが嫌って言ってるんじゃないし……」 「じゃ、なんでそんなに怒ってんだよ」 「怒ってないわよ!」 ――と言いながら、条件反射に叫んでしまう。 どうしてこうなってしまうのだろう……憤りながら、ミリアリアは呻いた。 「楽しくないなら、楽しくないって言えば良いのに」 彼女の言葉に、ディアッカは目を丸くした。 楽しくない、なんて思ってない。 欠片も考えすらしなかったことを言われ、言葉に詰まってしまった。 ミリアリアは続ける。 「私一人楽しんで、馬鹿みたい」 「……は?」 ポカンとするディアッカに、ミリアリアは続ける。 「楽しくないんでしょ? だから一人になろうとしたり……」 「それはお前が周りを気にしていたからで……そっちこそ、映画観終わってからつまんなそうにしてんじゃねーか」 「つまんなくないわよ。ただ…………すっごい恋愛物だったし……考えたら、あんたってこういうの、あんま好きじゃなさそうだし……」 語尾はもう、声が小さすぎて聞き取れないが――もしや、と考えが繋がっていく。 |