14万打踏 烏様より リクエストテーマ 「天邪鬼なミリィに振り回されるディアッカ」 「あーーーーーーッ!!」 彼女の怒号が響くのはいつものことだ。 いつものことだが、今日は少々勝手が違った。普段はディアッカの一挙一動に怒り果てるミリアリアだが、今日は――少なくともディアッカは、狙って彼女を怒らせてはいない。 ミリアリアが、ひどく勝手に怒っている。 「なんでそんなカジュアルテイストなのよ!!」 何を着て来い、と言われたわけではない。ただ「映画に行こう」とディアッカが誘い、「行く」とミリアリアが二つ返事でOKして、待ち合わせて合流して……それだけなのだ。 なのに、顔をあわせて早々、まず身形から駄目出しを食らってしまった。 「……何がいけないんだ?」 「いけないわよ!! いっつも何かびしっと決めてるのに……どーして今日に限って、そんな格好なのよ! これじゃバランス悪すぎ!!」 方やミリアリアは、少々シックに、ちょっと大人路線を目指した服装だ。 どうやら「取り合わせが悪い」と仰っているらしい。 「や、前回すごくラフっぽくきたから、今回もそーかなーと……」 ディアッカが言う。 そう、前回は今回と全く逆、ミリアリアがカジュアルに、ディアッカに至っては、スーツなんて着て来てしまって。なのでミリアリアも、前回とは全く別路線の格好で来たのだが……完全に失敗だ。 「出だしから最悪」 こんな感じで、映画デートは先行き不安なスタートとなった。 天邪鬼な僕の恋人 ディアッカの嫌な予感は、結構な確率で当たる。 「やっぱ映画観たら、パンフレット欲しいわよね」 にこにこしながら言うミリアリア。でも、楽しんで言っているのではない。オーラが言っている。 ――買って来いって言ってるの、分かってるわよね?―― ずっとこんな感じで進むのか――? と、ディアッカはかなり不安になった。 しかし、彼女の機嫌の悪さを放っておいて、良いことなんて何も無い。出来ることなら早急に回復してもらいたいので、彼はひたすら機嫌取りに励んだ。 とにかく機嫌を害さない様に。 良い席が取れたのは不幸中の幸い。観客が多すぎなかったのも手伝って、映画が終わる頃には、ミリアリアの機嫌は回復しきった――かに思えた。 「楽しい映画だったな」 「……そうね」 なぜか、彼女の歯切れが悪い。 「さてと。んじゃ次、どこに行く?」 「どこでも良い」 気乗りしない感じのミリアリアに、ディアッカは疑問符を飛ばした。 |