リクエストテーマ
「心温まるお話」


「……一応訊いておくけど、どの辺が『心温まる話』なの?」
「いがみ合う二人が、俺とゆー一人のために力を合わせた、心温まるストーリー」
「へー」
「……………………」



素っ気無い態度に、時が止まる。



「――ッじゃ、オマエの中の『心温まるエピソード』って何だよ!!」


時が動き出すまで、実に十秒ほどの時間が消費された。
怒り心頭のためか、滅多に使わない『オマエ』発言まで飛び出す始末。


ああ、この男は、こんな事でここまで怒れるんだ……と感心しつつ、ミリアリアはその身体を、椅子の背もたれに預けた。

実際、その現場に居ないミリアリアには、良く分からない話だった。演習とか、廃工場とか、人間関係とか……それら全てがディアッカの目線でまとまり無く話されているため、聞き手であるミリアリアは、完全に置いていかれしまっている。

ただ一点、救いを言うなら――……この話の発端が、自分であることだろうか。
ディアッカは、ミリアリアを元気にしようとして、この話を披露した。



自分のために。
それはすごく、嬉しい事。



ホントにこの男ってば――


「どーなんだよ、あるのか?」


依然噛み付いてくるディアッカに、ミリアリアはため息をついてしまう。



――仕方ないヤツ。



「そんなに言うなら話してあげないこともないけど?」


言ってミリアリアは、にこりと笑った。




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