リクエストテーマ
「心温まるお話」





「――で?」

話を一通り聞き終えたミリアリアは、頬杖をついて、語り手――ディアッカを睨み上げた。
するとディアッカはキョトンとして、

「え? 『で?』って何?」
「だから、それが何だって言うの?」
「ひでぇ!! 何だよ、その態度!!」

半眼のミリアリアに、ディアッカは被害者モード全開で言った。

「お前が『なんかこの頃疲れること多くて、外に出る元気も無いのよね〜』なんて言うから、お前の元気の出るような、それはそれは心温まるエピソードをだなあ!!」
「今の話の、どこで心を温めろってのよ」

ぴしゃりとミリアリアは切り捨てる。

「まったく……遠まわしに『面倒だから出かけるの嫌』って言ってるのに……どーして分かんないのかしら」
「分かってるから、悪あがきしたんだよ」

腕を組み、ディアッカは言い切った。


単純な話である。
ディアッカがミリアリアをデートに誘った。
ミリアリアはディアッカに「行く元気が無い」と断った。
そしたらディアッカが、ミリアリアのために「元気の出そうな心温まる良い話をする」と言い出した。
結末がコレである。


「俺は納得できねーぞ? 今のを『心温まるエピソード』って認められなかったら、俺の中にその手の話が全く無いってことになっちまう!」

拳を握り締め、彼は吼えた。
どうやら、ディアッカとしては最強の『心温まるエピソード』だったらしい。それがバッサリドッサリ切り落とされた姿は、なかなか悲壮なものがあった。




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