リクエストテーマ
「ツンデレとは何かをディアさんに尋ねるミリアリアさん」


「それより、遅れて来たのに、ごめんの一つも無いわけ?」
「ああ、悪い悪い。渋滞に引っかかっちゃって……」
「それはさっき聞きました」
「えーと、その、あまり余裕の無い時間に家を出る羽目になりまして」
「つまり――私を十分や二十分待たせても、さして支障はないと考えた、と?」
「違う違う! 俺がそんなこと思うわけないじゃん!」
「ふぅん……じゃ、あのクレーンゲームでお菓子落としてよ。それで少しだけ譲歩してあげる」
「おっしゃ! タワーごと落としてやるぜ!」

意気込み、ディアッカはクレーンゲームと壮絶なる戦いを始める。

とりあえず――相性占いの診断結果から気をそらす事には成功だ。あとは、ディアッカがかの用紙のことを思い出す前に、さっさとこれを捨て去るだけである。
手元から消えてしまえばこっちのものだ。

ディアッカの背中を見ながら、ミリアリアは診断結果に手を伸ばす。細長い紙を手の中に収め、気付かれないようにゴミ箱の方へ行き――


「相性度100%だって〜!!」


もう少しで捨てられる――というところで、彼女の身体を凍りつかせる言葉が耳に響いた。見れば、先ほどミリアリアが相性診断を行ったゲーム機の前で、同年代のカップルが一枚の紙を見ている。

そう。相性診断の結果だ。

慌てディアッカを見ると、彼はクレーンゲームにのめり込んでいて、外の世界の音が聞こえていない。
ホッと――安堵。
読みの鋭いディアッカのことだ。あんな風景を見てしまったら、一瞬でミリアリアの持っていた紙の正体に気付いただろう。
なぜ、見せたくないのかも――


「……ねえ、この『彼女のツンデレ具合が良い感じ』って、どういうことだろう」
「さあ……なんだろうな、それ」


続いて耳に入ってきた会話は、やはりあのカップルからのものだった。
どうやら彼らの診断結果にも『ツンデレ』という言葉が入っていたらしい。そして、その意味が分っていないようだ。
惜しい。ひどく惜しい。これで知っていてくれたら、会話の流れで彼女も『ツンデレ』の意味を理解できたかもしれないのに。

「ほんとに……どういう意味なんだろう……」

もう一度、診断結果に目を通す。
彼女は、文章の並び方から単語の意味を導き出そうと頑張ってみた。

ツンデレ。
なんとなく、冷たいイメージがある。
ツン、という響きが固さを表現している。
となると、この言葉は二つの意味があるのかもしれない。『ツン』と『デレ』。二つの単語か何かが合わさって出来た、一文字の言葉だとしたら……

……と、色々分析した結果――

「……さっぱり分らないわ」

お手上げだ。
分らない。全然まったく、分りそうな気配が無い。
どうしようか――と診断結果を凝視していると、突然、背後に気配を感じた。
紙を隠す前に、声が聞こえる。

「相性度、70%〜? なんで100%じゃねーんだ??」
「な! いきなり背後に立たないでよ!」

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