リクエストテーマ
「ペット(獣)パロディ」



「なるほど。『待て』を『伏せ』と勘違いしてるのか……」
「違う! これ、伏せじゃないから! 私の上で伏せられたって、重いだけだから!」
「そーだなー……けど、これはこれで一つの芸として覚えさせるってのも、良い案かも」
「こっ、こんなの芸にされたって……ひゃあっ! ちょ、変なとこ舐めないで〜っ!!」
「好かれてる証拠じゃないか」
「それはそーなんだけどっ……ってカガリ、冷静に分析してる暇あるなら、助けてよ!!」

超・大型犬ゆえ、ミリアリアのか細い腕だけではディアッカをどけることが出来ず……ふと友人が傍観しているだけ、という事実に気付くや否や、すかさず救難信号を打ち放った。

「良いのか? 助けて」
「お願い」

度が過ぎているとは言え、主人と愛犬のコミュニケーションを邪魔したくないカガリであったが、本人たっての希望に、渋々重い腰を上げた。
彼女は目を向けることなく『命令』を出す。

「やれ、アスラン」
「了解、ご主人様」

後ろに控えていた、忠犬・アスランに。

「力ずくで良いんだな?」
「まあ、大丈夫だろ。こんだけ大きいんだし」
「分かった」

瞳に冷たい光を宿すと、アスランは一歩、カガリの前に出た。
そのまま足を進め、ディアッカの横に立ち。


カチャリ――と不気味極まりない金属質な音を響かせる。


ディアッカの耳元で。
すぐに彼は理解した。自分の頭部近くに、直径三センチほどの弾丸を飛び出させ、当たり所が悪ければ、簡単に人の命を奪い去っていく、恐ろしいほどに物騒な代物が置かれていると。
不気味な音は、発射口に弾を転送させる音だと。

一瞬で静かになったディアッカは、ゆっくりゆっくり振り向いて――

「――って、うぉわ! マジで発砲体勢入ってんじゃねーか!」
「悪いな。愛しいご主人様から、力ずくで助けろと指令を受けたんだ」

にっこり笑うアスラン――それはまるで、悪魔の微笑み。

「つーかお前、今の俺らは『犬』っつー設定なんだぞ?! 犬が拳銃なんか持ってんなよ! んなことよりそれ! その獲物はどこから出した!!」
「懐しかないだろ。頭悪いな、お前」
「な、ん、だ、と〜?」

アスランの挑発に、頭が沸騰し始めるディアッカ。
そんな大型犬をさらに挑発するべく。アスランは正論を続ける。

「確かに俺達は『犬』という設定で遊ばれてるが、犬らしいところは尻尾と耳だけで他は人間と変わらない容姿なんだ。喋るし服は着てるし、歩くのだってごく自然な二足歩行なんだから、こうやって拳銃構えていたって何ら問題は無いだろ?」
「うわーっ! お前、言ったな?! 駄文なんだから、言わなきゃ気付かれないようなことまで、親切丁寧に暴露すんなよ!!」
「甘いなディアッカ。駄犬・ディアッカから想像される絵面的なことも考えてみろ。ディアッカって名前の犬がハウ嬢に飛びつくよりは、犬耳&犬尻尾のお前がハウ嬢押し倒している方が、どれだけ楽しいか」
「そりゃそーだけどよー……」
「そこぉっ! そこで同意しないっ!!」

いつの間にかカガリの後に避難していたミリアリアから、野次が飛ぶ。
そう、アスランは内輪の話で場を盛り上げていた様で、実はカガリからの命令を忠実に守っていたのだ。


ディアッカの気を引いて、その間にミリアリアが逃げ出す――



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