リクエストテーマ
「ペット(獣)パロディ」


「おすわり!」

ミリアリアの号令により、彼女の愛犬・ディアッカは、その場に座った。

「お手」

と言えば、左手を彼女の手に乗せる。

「おかわり」

と言えば、逆に右手を乗せてくれる。しかし――

「伏せ!」

ジェスチャーも付け、ディアッカを伏せさせようとしたミリアリアだったが――ディアッカはただ、ごろんごろんと転がるだけだった。





ご主人様と駄犬






「……とまあ、こんな感じなの……」

はあ、と大きなため息をつきながら、ミリアリアは目線を上に上げた。しゃがむ彼女が見上げるのは、立ったまま全てを見ていたカガリ・ユラ・アスハ。隣のマンションに住む、ミリアリアの友人である。
今日は他でもない、友人のカガリに教えを請おうとしているのだ。

ペットを飼う先輩に――

「まあ、伏せる意味を履き違えてるだけで、命令としては通ってるんだよなー……」

カガリもまた、犬を一匹飼っている。ディアッカほど大きな犬ではないが、カガリの命令を忠実に聞く、それこそ犬の鑑だ。
一人暮らしを始め……物騒だし、誰もいない部屋に帰るのも、何だか寂しいし……そんな時、カガリと[忠犬]のやり取りを見て、いいなあ……と思って。

ふらりと入ったペットショップで出会ったのが、この超・大型犬『ディアッカ』だった。

「他には? これだけじゃないんだろ?」
「うん……」

伏せ、と言うと寝っ転がる――これだけなら、わざわざカガリを呼んで、躾指南なんて頼まない。もっと他に、困ったさんなことがあるのだ。


「それがね……『待て』って言うと――」
「あお〜ん!!」


突如、ディアッカが雄叫びを上げた。
どうやら今、ミリアリアが呟いた「待て」に反応したようである。


「ちょっと!! 今のは『待て』じゃなくて――」
「あおお〜ん!!」


ミリアリアの制止など全く聞かず、ディアッカは飛び上がった。そしてそのまま、ミリアリアの上へ――


「だから、『待て』はその場で動かないって……やー、もう、なんで私の上で『伏せ』るのよぉ〜っ!!」

愛犬の暴挙に、ミリアリアは悲鳴を上げた。
現在の彼女の状況を一言で説明するならば――押し倒された格好である。


ご主人・ミリアリアが。
愛犬・ディアッカに。


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