リクエストテーマ
「ディアミリ夫婦+子供の甘々ほのぼの話」


当たり前……よね。自分の誕生日にケーキ作るって、どう考えても変だし……
そう思っていたら、今度は母さん、私を覗き込んで訊いてきました。

「もしかして、私達のため?」

きっと父さんから、私が結婚記念日知ったことを聞いていたんだろうなー……だから簡単に、こんな言葉が出て。
全部悟って満足気な母さんとは真逆に、私は恥かしさで一杯でした。
渡そうと思ってる人に、作りかけのケーキを見られて……うう。なんか、泣きそう……

「……ほら、じっとしてる暇は無いわよ?」
「え?」
「早くしないと、父さん帰ってくるわよ?」

顔を上げると、母さんはエプロンを着けてました。

「私も手伝うから、あの人帰って来る前に作っちゃおう」
「……うん!!」


忙しい母さんと料理をするのは久々で、私は嬉しくなりました。
母さんにはバレちゃったけど……二人で作るのは、すごく楽しい。
お皿に乗せて、生クリーム塗って、デコレーションして……

「ふうっ。完成っ」
「――たっだいま〜」

力作完成に額の汗を拭ったところで、玄関から父さんの声が響きました。
うわあ〜、すっごいギリギリ……良かった、母さんに手伝ってもらって。

「お? 何だか良い匂い――って、ケーキ二つ?!」

リビングに入り様、父さんは後ず去ってしまいました。
……忘れてた。父さんって、甘いもの苦手だったんだ……
悪い事したかな? ……と思ったら、なぜか父さんも、ケーキの箱を持っていました。

「どうしたの? それ」

私が訊く前に、母さんが訊きます。すると――

「や、結婚記念日バレちゃったし、祝いのケーキは二つ必要かなーって」
「バレちゃったって……あんたが勝手にばらしたんでしょーが」

べしっと、母さんのツッコミが炸裂します。
これが我が家では日常茶飯事なんです。
ここだけ見ると、夫婦仲を疑いたくなるけど、こう見えて、とても仲の良い夫婦だったりします。

特に、父さんの「母さん好き好き度」は異常です。よくこの人が三年も別居――もとい単身赴任生活に耐えれたもんだと、毎日不思議に思ってます。
今も、ほら。

「ほい、あ〜ん」
「自分で食べなさいよ、自分で! 折角××××が作ったんだから……」
「ちゃんと食べてるぜ? だからほら、大きく口開けて」
「自分で食べるから! もー……近いよ!」
「近づいて何が悪いのさ」

自分のケーキを食べさせようとしていた父さんの口が、母さんのほっぺたに触れちゃったり。

「娘の前で何するのよ!」
「娘の前だからこそ、夫婦のスキンシップ〜」
「普通しないから〜〜!!」
「他所は他所。うちはうち」

あ、抱きついた。
そして母さんは……一応文句を言いますけど、いつの間にか、空気に流されちゃいます。
これまた、日常茶飯事。
この光景を見るたびに思うのは……旦那選びは慎重に。好き合ってても、安易に結婚しちゃいけないな、とつくづく感じるのです。

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