リクエストテーマ
「ディアミリ夫婦+子供の甘々ほのぼの話」


それ以降、私は昔の事を訊かないようにしました。知りたいことはたくさんあったけど、父さんだって母さんだって、話したくないことはあるから……けど、一つだけ訊きたかったんです。


二人の、結婚記念日。


カレッジの友達が、結婚記念日にケーキを焼いたら、両親が大喜びしたって聞いたんです。私も二人に喜んでもらいたくて、でも母さんに訊いても恥かしがるだけだろうから、さりげなく父さんに聞いてみたら……





「なんだ、覚えてないのか? ××××が言ったんだぞ?」
「言った……? 何を??」
「お前がもうすぐ三歳の誕生日――って時だよ。記憶に無い?」
「……私、コーディネーターじゃないから、そんなに記憶力無いもん」
「ま〜、並みのコーディネーターでも、三歳じゃ記憶吹っ飛んでるけどな〜」

ははっ、と父さんが笑います。
……ていうか、父さんは一体、何の話をしてるんだろう……

「じゃ、記念日に教えてやるよ。俺らが結婚した理由」
「……私、理由じゃなくて記念日の方を聞いてるんだけど」

眉間にしわを寄せる私に、父さんは優しく囁きました。


「記念日は――お前の誕生日だよ」





どうやら二人は、私の三歳の誕生日に入籍したらしいんです。それまで私は、母さんと暮らしていたとか。
この「空白の三年間」は、父さん曰く「単身赴任」らしいです。「三年間、別居生活だったんだ〜」って冗談半分に言ったら、こっぴどく怒られました。
籍も入れてないのに、単身赴任は違う気がするんですけど……ここで完全否定したら父さんが可哀想だから、あえてツッコミ続けるのは止めました。

……えと、そんなわけで、二人を驚かせ、喜ばせるために、私はケーキを作るんです。
誕生日にケーキを作る――って考えると、ちょっと哀しくなってくるけど、二人のためだから、気合を入れます!
娘の誕生日だったり、夫婦の結婚記念日だったりするけど、二人は忙しい身の上です。今日も十分帰りが遅いから、今から作っても余裕で間に合うはず。初めてケーキを作るというのも手伝って、ゆっくり慎重に作業していたら……

「ただいま〜」

無事スポンジが焼け、これからデコレーション――というところで、母さんの声が響きました。
え? 嘘!! もうそんな時間?!
時計を見ても、まだ帰ってくる様な時間じゃないのに……ああ、それよりケーキどうしよう。まだ作りかけ……


とにかく、隠さなきゃ!!


「……何やってるの?」

隠さなきゃ、と思ってる間に、母さん、台所に登場。
手には、ケーキが入ってそうな箱を持ってます。

……あれはきっと、私のためのケーキ。
それに比べて、こっちのは作りかけ。
せっかく驚かせようと思ってたのに〜っ!!

バツが悪そうに俯いてると、母さんは近づいてきて、作りかけのケーキに目をやって……

「……ケーキ?」

……首、傾げてます。

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