リクエストテーマ
「ディアミリ甘々」



対照的に、俺は違和感で頭が一杯になった。

ミリィと呼ばれ、喜ぶミリアリア。
はにかむ彼女はとにかく可愛い……けど、何かが引っかかる。


違う、と頭が警鐘を鳴らしている。


夢と言い続けたせいだろうか。
よく『夢』で見る『理想の微笑』に見えてならない。


全てを慈しむ微笑。
俺一人にだけ向けられる、愛しの笑顔。



ずっと、こんな彼女に逢いたかった――



けど、違う。
やっぱり……これは違う。現実のわけが無い。

そう。だってこれは夢だから。


まるで夢。
きっと夢。
絶対、夢……


分かってたんだ。これが夢だと。
時間が経てば覚める夢だから、過度の期待をしてはならないと、脳が知っていた。


俺はゆっくり手を引いた。すると彼女は目をしばたかせ、

「ディアッカ?」
「触んな」

かなり低い声で告げたからだろうか。彼女の肩が、大きく震えた。


むせかえる様に漂う、甘い香り。


「どうして? ここに居れば、望みの夢が見れるのに……」

寂しげにつぶやく『ミリアリア』に、俺は言ってやった。

「俺が欲しいのは、現実のミリアリアなの」

たとえ、いつも怒ってばかりでも、全然笑顔を見せてくれなくても、俺の思い通りにならなくても……


それがまた、あいつの魅力だから。


ぐにゃりと歪む視界。
甘い香りが支配する中、最後まで瞳の中に居続けたのは、切なく微笑む『ミリアリア』だった――

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