リクエストテーマ
「ディアミリ甘々」


「はい、ハーブティーよ。リラックス効果があるって、艦長が言ってたわ」
「ああ、うん。ありがとな」

絶対に夢だ。夢じゃなきゃ、こいつが俺に、こんな笑顔を見せるはずがない。
まるで自分に言い聞かせる様に、心の中で主張し続けた。

だがこの夢は、覚める気配が全く無い。意識はこんなにも、はっきりしてる。


夢……だよな?


軽く疑いつつ、現実なら良いのになぁ……と思いつつ、カップに口をつける。
……美味い。
なるほど、リラックス効果があるってのも頷ける。ホッとするってゆーか、心地良い香りが何とも安心させてくれた。

「お前が淹れたの?」
「うん。ティーパックに入ってないの淹れるの初めてだったから、一回失敗しちゃったけど……それは大丈夫よ? ちゃんと味見したから」
「あ――」


――味見?!


一瞬、意識がどっかに飛んでった。
味見って……どこで味見したんだよ。

……あっはっはっ。それは無いそれは無い。考えすぎだ、俺。そんな願望捨てちまえ。天地がひっくり返ってもありえねーから。
でもなあ……カップの反対側に、薄〜くリップクリームが付いてる様に見えるのは、はたして俺の気のせいだろうか。

「……美味しくない?」
「え?」
「口に合わなかった??」

見れば――ミリアリアが心配そうに、こちらを覗き込んでいる。

「美味いよ?」
「なら良いんだけど……無理してない?」
「してないしてない。なんだ? ミリアリア。人の心配ばっかして」

息をはき出す様に笑うと、俺はミリアリアの頭をくしゃりと撫でた。
しかし逆に、彼女の顔は曇ってしまう。

「……ミリアリア?」

何か、気に障ることでも言っただろうか。
もう一度名を呼んで思考を探ろうとすると、彼女は一層、俯いてしまう。

表情を隠すように。

「……つになったら……」
「?」


最初は小さなかすれ声。
続く言葉は――


「いつになったら、ミリィって呼んでくれるの?」
「え――」


耳を疑う。
彼女、今なんて言った??
ミリィ?


ミリィって呼べって――そう言った――??


「だ……お前、俺に呼ばれるの嫌がってんじゃんか……」
「嫌がってなんか無い」

うろたえる俺を気にかけることなく、彼女は続ける。

「だってディアッカ、人の事からかう時にだけ呼ぶんだもん……本当は、ずっと、呼んで欲しかった」
「ミリア――」


ミリアリア――そう言いそうになって、息を呑んだ。
彼女の潤む瞳が、俺の声を途切れさせる。

今、言うべき名はこれじゃない。
もっとふさわしい名前――


「……ミリィ……?」


言った瞬間、ミリアリアの顔が、ぱあっと晴れた。

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