リクエストテーマ
「一人でなんて居たくないのに‥どうして?助けてくれようとするその手を、いつも、振り払ってしまう」


「……ふぅ……」

ディアッカの姿が消え、ミリアリアはようやく、安堵のため息をついた。
彼女はそのまま、祈りをささげる台座に背をつけ、崩れる屋根の隙間からこもれる太陽光を眺める。
光の先には、まるでスポットライトを浴びるかの様に、床を突き破り、雑草が覆い茂っていた。

陽の当たっている所だけに。


……なんて光景だろう。

なんて、悲しい風景だろう。

冷たい床と、少しだけ入ってくる光が細々と繋げる命。
外の賑わいは遠すぎて聞こえず、静かな空間が、彼女を暗闇の世界へ誘っていく。


知らない場所に、一人きり。
何でもないことに、悲しみを覚えてしまう。
まるで世界中で一人ぽっちのような。


そう、ひとり。


一人という心細さ。

この頃の彼女は、ふとした瞬間に、激しい孤独に襲われることがあった。


ひとりはくるしい。
ひとりはさみしい。
ひとりはこわい。

身体を縛る心細さ。


こんな時は、いつもディアッカが声をかけてくれた。

けど、この場に彼は居ない。

彼女が拒絶したから。

追い出したから――


仕方ないじゃないか、傍に居てほしくないんだから。


きっと私は、あいつのことが大っ嫌いなんだ――


けど……本当に嫌い?
あいつのいない世界は、こんなに苦しいのに。


好きじゃない。
嫌い。
でも、こんなに……こんなにも、傍に居てほしい。

「……によ……」

溢れる涙を拭いながら、ミリアリアは嗚咽をもらす。


「……やだ……」


こんな場所にひとりぽっちになって気付き始める、ディアッカという存在の大きさ。
どれだけ自分が、ディアッカに支えられていたのか――

きっと本人を前にしたら言えないだろう本音を、彼女はつぶやきだしていた。



「ひとりにしないで――」



ひとりは怖いの。
恐怖で身体が竦んでしまう。
音のない静寂が、私に苦しみを与えてくれる。

今ここで、こうして生きていること。
明日には、命が無いかもしれない。

どうなるか分からない不安が、心も身体も支配する。
孤独が絶望を運ぶ。

だからずっと、誰かといた。
サイだったりマリューだったりムウだったり…………ディアッカだったり。


きらいなのに。


「何で行っちゃうのよぉ……」
「じゃ、出てけって目で訴えるなよ」

声は天井から響いた。

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