リクエストテーマ
「一人でなんて居たくないのに‥どうして?助けてくれようとするその手を、いつも、振り払ってしまう」



別に、ただタイミングの問題でこうなっているだけなのだが……なぜか取り残されている様な錯覚に陥ってしまう。


世界でたった一人きり――


変なことを考えてしまう自分の弱さに、嫌気すら差してしまう。
だからだろうか。

「どーしたんだ? こえ〜顔して」
「……あんたに関係ない」

覗き込んでくるディアッカを、いつも以上に、邪険に扱ってしまうのは。

彼はいつも、ミリアリアを気にかける。
落ち込んでいる時、苦しんでいる時……一番最初に手を差し伸べるのは、他の誰でもないディアッカだ。
今だって彼は、全身で彼女を心配している。

しかしミリアリアは、彼の好意を甘んじて受けることが出来なかった。


心が拒絶する。


――嫌い――なんだと思った。


「おい、どこ行くんだよ!」
「いいでしょ、どこでも」

関わってほしくない。
ディアッカから少しでも離れたくて、彼女はその場から歩き出した。一人みんなから遠ざかる足は、近くの朽ち果てた建物へと進んでいく。
その少し後ろから、当たり前のように、あの男もついてきた。

「単独行動はやめろよ。全調査終わったわけじゃないんだから……」
「この辺は大丈夫だから降りたんでしょ? ……いい加減、ついて来ないでよ」
「あぶないだろ」
「…………っ」

正論を持ち出され、ミリアリアは何も言えなくなった。
彼の言う通りである。どんな危険が潜んでいるかも分からない廃コロニー……その上彼女が入った建造物は、屋根も崩れ落ち、壁もボロボロで――いつ完全に崩壊してもおかしくない、教会のような跡地だ。

「出た方が良いって……おい、聞いてんのか?」
「聞いてない」

ドスの効いた声で、彼女は言った。

「あんたの言うことなんか、きくつもりも無い」
「ミ――」
「触らないでよ!」


ぱしんっ。


礼拝堂の前で、彼女は差し出される手を振り払った。
強張る表情に、ほんの少しだけ罪悪感が生まれるも、ミリアリアは険しさを消そうとはしない。

睨み合いは、数秒間続き――

「……へいへい」

最終的に、彼女の意志の固さを感じ取ったディアッカが、負けました、とばかりに肩を竦め、彼女に背を向けることになった。
ゆっくり歩く様は、まるで彼女から、声をかけられるのを待っているようで。

しかしミリアリアは、ディアッカの姿が見えなくなるのを、固唾を呑んで見守っていた。


早く――早くいなくなって。


ひたすら願う。

建物の外に足が出て、律儀に扉が閉められるまで――

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