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「ディアミリデート」


「何が辛い?」

彼は問う。

「トールと約束した場所に、俺と来てる事?」
「…………」
「それとも――俺とのデート中に、トールを思い出すこと?」
「……強いて言うなら…………りょうほう」

悔しさ全開に、ミリアリアはつぶやいた。
この男には本当に――隠し事が出来ない。
ミリアリアは、ディアッカの視野の広さに落胆した。

トールに申し訳ない、と思っているわけではない。

ただ……考えてしまう。


――トールも、楽しみにしてたのよね――


そう考えてしまえば後の祭り、思考はどんどん暗い方へと傾くだけ。

しかも、デートの最中に他の男性を思う自分が許せなくなる。


ネガティブの堂々巡りだ。

「……別に良いじゃん、んな、深刻に悩まなくたって」

ディアッカは、あっけらかんと言い放つ。


「前にも言ったけど、俺、お前がトールを大事にしてるの、嫌いじゃないし」


当時彼は、そう言って優しく抱きしめてくれた。


「死んでしまった人は、思い出の中でしか生きていけないんだから」


その言葉に、彼女は泣いた。


「だからさ、ミリアリアの心の中に、トールは居て良いんだよ」


救われた気がした。自分の全てを受け入れてくれる人がいる安心感が、涙を流させたのである。

でも、今の彼女は……情けなくて泣きたくなっていた。


――私はいつまで、ディアッカに励まされ続けるんだろう……


自分は、彼の役に立っているだろうか。

「今日はさ、来れなかったトールの分まで、楽しんでやろうや」

ディアッカが紡ぐ。

「……こんな楽しい所、悲しい思い出にするの、勿体無いじゃん?」

言われ周りを見渡せば、自分達とは別次元の賑わいがあった。
遊園地は、楽しむ場所。こんな……苦しい気分になる所ではない。


楽しめば良いんだ。
悩んだり迷ったりしないで、遊び倒そう。そうすれば――ディアッカが変な気を使うことも無いだろう。
胸にうずく悲しい記憶も、楽しい思い出に塗り変わるかもしれない。


そう、結論付かせ――

「うん」

ミリアリアはにこりと笑った。

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