5 「ヤッちまうことにした」 *坂田回想の坂田×人外(拷問も)、坂田の自家発電、坂田軟禁。 快適な居場所を、河上は用意してくれた。 船底に近い階層で、人は滅多に来ない。風通しが良くないくらいなんでもない。空調はしっかり利いている。万事屋よりずっといい。 幽閉するつもりはないから、たまには空気を吸いに来いと河上も高杉も言ってたが、今のところそのつもりはない。 土方は何を思っているんだろう。 高杉ンとこに転がり込んだことが耳に入り、極刑にでもするつもりか。 あの醜態を攘夷側に洩らさないよう、口を封じるつもりかもしれない。 俺に何かしら特別な感情を抱いた時間なんぞ、遠い昔の話だろう。 黒い隊服を纏い、高い背を真っ直ぐ伸ばして颯爽と市中見廻りをする姿。 艶やな黒髪の下の、獣じみた光を宿す瞳。 あれを見ることはもうないだろう。 そのことについて、後悔も悲しみもなかった。 俺はそれだけのことをした。そういうこと。それ以上でもないしそれ以下でもない。強いて言えば、俺自身がしょうもない生き物だってことが、またわかっただけだ。 戦場でもそうだった。 気に食わない敵を、気に食わないって理由だけで叩きのめし、屈辱を与えた。 娑婆に帰って気がついた、俺の性癖が普通じゃないと。 天人だって構わなかった。もっと言えばヒトガタでもない生き物にも俺はちゃんと欲情した。相手が強ければ。 ガマガエルみたいな大男を犯したこともある。どこに穴があるかわかんねえから、火で炙りながら白状させた。受け入れる体位をとらせるまでに、ソイツの片手から肉は削げ落ちてた。 その性癖を娑婆に持ち込まなかったのは、単に犯罪になるからだ。犯罪はどうでもいいが人に混じって生きられないのは、なにかと不都合だ。新八やお妙、神楽の目もある。追及されるのは面倒だ。 そんな中でも土方は別だった。 あの男の矜持を踏みにじることを考えただけで、下半身は熱く充血した。土方が傷を負い、屈服を余儀なくされる様を具体的に思い浮かべて精を放ったことは数知れない。 実際組み臥せたときの、驚いた顔。 冗談ではなく本当に強姦されるのだと知ったときの、肢体のしなり。 こんな美しい生き物に、己の精を注ぎ込めることへの高揚感。 その記憶だけで俺は生きていける。 この部屋でいちばん気に入っているのは、鍵が内側から掛けられるのに密室ではないところだ。 下半分は紙を取っ払った障子なのに、上は手では突き通せない特殊な材質の貼り物がしてあって目隠ししてくれる。その上空き部分からは手の届かないところに鍵がついてるから、外から開けることはできない。 まあ、元々は鍵の位置も障子の向きも、全部逆だったんだろうけど。 そんなことは俺には関係ない。 「暇そうだなァ」 最も来て欲しくない男は、河上の目を盗んで繁々と通ってくる。 「しゃぶらせろよ。盞ごしに」 「やなこった。どんな羞恥プレイだよ。したきゃそこでひとりでヤッてろ。あー、ヤんなら尻の穴はこっち向きな」 「テメェも大概だな。オナニーなんぞする必要はねえ。ただ、テメェのサイズの奴がなかなかいなくてよォ」 「ますます迷惑だよ。オメーの口じゃ俺は不満なの」 「フン。巨根に生まれついた自分を恨むんだな」 「ハイハイ……わかったから帰んな。銀さんこれからオナニーすっから」 「ネタは副長どのか」 「……」 なんだか、とてつもなく嫌な感じがする。 「図星だろ? ウチの河上はしつこくてなァ……とうとう、調べ上げてきたぜ」 「で、河上は? どうしてる」 「ほお。万斉の奴、テメェにゃ話してたのか」 「答えろよ」 「ちょっとした、懲罰房さ」 「……テメー、あいつを食ったのか?」 「ヤッちまうことにした。河上に突っ込まれた土方に突っ込ませるってのも、乙だと思わねえか?」 「……!!」 「テメェが見ててくれるとなおいい。誰の損にもならねえどころか、四人とも天国見られるぜ」 「……」 「実はな、もう捕まえてあんだ。土方十四郎って奴を」 今夜にもヤる。 高杉は艶やかに笑って、俺の頬を撫でた。 章一覧へ TOPへ |