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「最近、隈もあるし……寝れてないよね、たぶん。僕たちにできること、何かないかな…」
「そうだな」
歩の言葉が静かな部屋によく響いた。
大切な友人のためになにができるだろうか。互いに思うことは一緒だ。なにもしてやれないことが歯痒い。わがままかもしれないが、頼って欲しいと思う。
悠璃の今回のように一人で抱え込んでしまうようなところがあるからだろうか。悠璃の交友関係はあれでいて広く、親衛隊に世話されていたりするし、構いたくなる気持ちは分からないでもない。
「そうだ、確か悠璃のやつ、理想のひとを見つけたって言ってなかったか」
「そういえば…」
ふと図書館の控室で悠璃が言っていた発言を思い出す。悠璃はさらさら明かす気はないみたいだったけれど、そのひとのことを話すときに自然にこぼれたやわらかな微笑だけで彼にとってプラスになる存在だというのは理解できた。そのことが彼の拠り所となっていればいい。最悪、自分たちでなくてもいいのだ。彼が潰れてしまわければ、それで。頼ってくれなかったことに一抹の寂しさを覚えるだろうが、それだけだ。
「悠璃くんに僕たちがしてあげられること、かあ……。やっぱり僕はご飯とかの差し入れかなあ」
「俺も悠璃のそばにいて転校生に連行されるのを阻止できるようにすることだな。あとは親衛隊とかの呼び出しとかもありそうだし、注意はしとくか」
「そうだね…。そういえば、風紀からの護衛もついたって言ってたけど、今のところ直接的な呼び出しとかはないんだよね?」
「俺はないけど…悠璃はどうだろうな…。転校生が来た当初に悠璃から親衛隊から逃げ回ってるみたいなことを遠まわしに言ってたから、もしかしたら…」
やはり悠璃は自分たちに告げていない部分も多いのかもしれない。それでも、できる範囲で力になりたい。
「冬吾くん」
隣に座っていた歩の手がそっと重なってくる。その細い指をしっかりと握り返した。
「ああ、俺たちにできることをやろう」
「うん」
さしあたっては軽食でも差し入れようか。勉強会もいいかもしれない。内緒話のように相談を重ねて、恋人たちは共通の友人を思って笑い合った。
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サブタイトルは『恋人たちの秘密会議』です。
巻き込みたくない悠璃は基本的に大切な人を遠ざけてしまうので、逆に周りが心配します。それでいて、そのことを知るとひどく喜んでお礼を言ってくれるので周りが離れられないような、こうタラシみたいなところが悠璃たる所以です。