月花に謳う

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「どちらにしろ、彼から貴方に助けを乞うとは思えませんから、僕はこの役目で良かったと思いますよ。それで、どうされますか?」

「もう少し、様子を見よう。親衛隊の動きも気になるし、アヤが来る前に風紀からの定期報告があってね、悠璃が保護対象に認定されて護衛もつくそうだから。その転校生の素性も気になる。それに生徒会役員も解任するにしても、ただ解任するだけじゃ解決にならない。もう少し、証拠が欲しいな。今のまま僕が出て行っても反発が出るし、それによって混乱する方が問題だ」


 むしろ泥沼化しそうだな、と月花がぼやく。学園が更なる混乱に陥っては意味がない。悠璃を現状から救い出したいのはやまやまだが、ここはカースト制度まで用いられた世間の縮小図。その頂点に立つ存在が逆の役割を果たすなどあってはならない。私利私欲は二の次だ。


「承知しました。今までの生徒会役員の問題行動と転校生の動きについても可能な限りまとめておきます」

「いや、餅は餅屋だ。情報なら情報屋に頼むのが一番だね。ちょうど聞きたいこともあったし、彼に連絡を取ろう。たぶん協力してくれるだろうしね。アヤは生徒会役員の動向と生徒会室でのことを中心にまとめてくれる?情報屋からの情報もアヤの方へ随時送るように伝えておくから」

「分かりました。それから、転校生と霜野くんが同室なのも解消しなくてはなりませんね。会長が同室許可の書類を出してしまったので、そこで止まってるんじゃないかと思うので。保護対象になるなら、なおさら解消申請の書類は通りやすくなるでしょうし、僕の方で手配しておきます」

「頼んだよ。ああ、それから」

「はい」


 月花がやわらかな微笑を浮かべる。おぼろな月の光を受けて白金髪が輝き、黄金の瞳が優しく細められる。その美しい笑みを見るだけで文人は彼が誰のことを考えているのを悟る。


「ちょっと頼まれごとをしてくれる?一緒に選んで欲しいものがあるんだ」

「喜んで、我が主」


 だから文人微笑んで返す。月花だけでなく、文人だって彼のことは好意的に思っているのだ。むしろ、喜ばしい。
 約束をとりつけた月花は再度微笑むと、先程から手にしていたファイルが入った鞄を片手に温室を後にした。




 →
mokuji


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