月花に謳う



19




 放課後。私立校であり坊ちゃん校であるここは多くの教室があり、放課後使われていない教室も多くある。その中に連れ込まれて暴行や強姦などが起こることもあるから、人気のない廊下や空き教室は風紀委員によって定期的に見回りが行われている。
 その一室である今はもう殆ど使われていない資料室の一室で。ここ最近頻回に行われている会合が今日も行われていた。


「それで、準備はできているの?」
「まだだよ。最近、風紀の見回りも厳しくなっているし…」
「そもそもあの計画で大丈夫なのか?」


 やや潜めた声音。話す内容が咎められると分かっているからだろう。でなければこのような場所を選んだりはしない。
 彼らは生徒会親衛隊だった。それも過激派と呼ばれるタイプの。


「それでもやらなきゃ。これは見せしめだもの」
「そうだな。親衛隊だって貴族の生徒会には近づけないのになあ」


 今代の生徒会は親衛隊に対し、否定的だ。庶務のところは当たり障りのない関係を築いているし、会長や会計の身体にはセフレも多いのだが。積極的に好意がもたれているかというとやはりそうではないし、副会長は親衛隊を毛嫌いしている。

 特に荒れているのは会長と会計の所だ。転校生の五月女柚木が来てから彼らからのコンタクトが途絶えたのだ。完全ではないが、時々のお気に入りの生徒が気まぐれに呼ばれるくらいだ。そのせいで今まで交流のあった均衡が保たれたていた関係が崩れ、親衛隊には不満が溜まっている。加えて、穏健派との対立だ。生徒会役員が本気ならば応援すべきだという声もあるし、その筆頭が総括の藤宮なのだから厄介だ。前任の隊長から指名で総括になった彼は有能であり、生徒会に惚れこんでいるわけではないため比較的中立の立場にいる。親衛隊という組織の性質上、ある種異質な存在なのだ。彼を慕う者も多く、従う者は少なくない。怪しい動きを少しでも見せた者は今のところほぼ見つかっている。

 例外は今ここに集う彼らだ。本当に藤宮は気付いていないのか、泳がされているのか冷や汗ものだった。彼らは少しずつ手を回し、制裁を企てている。



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