月花に謳う
15
風紀は親衛隊を取り締まることも多いし、抑止力としても機能していることから、親衛隊にいい印象がないのは知っている。それに割と最近まで悪い噂が立っていて、やっと沈静化もしてきているところだ。親衛隊から脅迫状が届いているし、余計な波風を立てずに内々に収めたいのも分かるけれど。今、その親衛隊が内部でどういう状況にあるか知ってる?
「その嫌そうな顔やめてよ。円堂って食堂で食事を摂ることってある?」
何が言いたい、と言いたげな怪訝な視線を受け、茜は笑う。不思議なんだよね。いつの間にか彼が好きだという者に囲まれていて、悠璃くんは彼らをただ慈しみ囲い込んでいる。
「悠璃くんね、親衛隊を二テーブル分、侍らせてるの。親衛隊総括の藤宮を始め、あの副会長親衛隊の若潮もだよ?他にも幹部とか、リーダー的な子も多くてねぇ。」
「は?」
まるで意味が分からない。そういう顔する円堂がたまらく可笑しい。
まあ、彼が望んだというより、周りが心配してそういう事態になったらしいのだけれど。彼はコレクションに徹底的に甘いくせに、自分のことに関心がないのが難点なのだ。
入学からそう経ってもいないのに、本当にどうやって虜にしたんだか…。
「まあ、そういうことだから。悠璃くん、親衛隊の有力者に知り合い多いよ?とりあえず、協力を仰いでみたらどうだろう」
「それは……」
「うだうだ言ってる状況じゃないんだから、贅沢言わないことだよ。そんなこと言ってる余裕あるの?」
「……分かった。早急に手を回そう」
「うん、そうして」
さて、これで僕の仕事は終りだ。後は風紀や悠璃くんのコレクションの子たちが陰で動いてくれるだろう。悠璃くんは怒るかもしれないけどね。
あとはもう一件。あちらはどうかな。もう調べているころだろうか。早くしないと大事になって後悔するよ?
84/106
prev next
back
Copyright(c)template by mellowette